苦しみを含めての喜びーファンサイト20周年によせてー

2025年9月9日、このウェブサイト、アレクサンドル・ヴィノグラードフさんのファンサイトを開設して20周年を迎えました。

Drawing by my friend, Basilio, Thanks!!!


(イラストはお友達のBasilioさんより。ありがとう!)

当時仲良くさせて頂いていたオペラ好きの先輩方が、既に功を成し遂げているお気に入りの演奏家についてのまとめサイトを次々と開設なさったのを見ていて、

「旅先で偶然聴いて気になって。まだ若くて、情報も殆どない歌手だけど、幸い?他にそういうサイトもなさそうだし・・・だったら自分のまとめ用に作っちゃえ」という勢いだけではじめて(最近は手を抜きまくりだけど)20年。。。

ちょうどコロナ禍の頃に書いた記事が見つかり、これは20周年記念にもふさわしいかも?と思って、ちょっと編集して載せておきます。

当時は「追っかけ」という言葉が主流で(今でも私の気持ち的には「追っかけ」が一番しっくり来ます)
各々のブログで好きな演奏家についてあーだこうだと主張し、時には大げんかもしたり・・・
当時のことをあまり好きではなかった・・・と仰る方もいらっしゃるけど、私の原点はやっぱりあの時代だなあ・・・と思います。

5年前のコロナ禍では「推し活」ブームについて語られた記事を見ることも増えてきたように感じていました。

目次

【推し活】はハッピーオンリーですか?

おそらく、あんなご時世故に、様々なジャンルの「推し様」たちのライブ活動に制限が出ており、ファンたちもライブへ行けないわけで。
これまでの追いかけ方とは違う方法を模索したり、人によっては「推し(活)」と自分との関係性を見直すきっかけにもなったのかな・・・と感じています。そんな中で

「推しのいる生活は人生を豊かにしてくれる」
「楽しいから推しを【作る】べし」

など、推し活に対するポジティブな記事も多く見かけます。

・・・そうかなあ・・・

コンプレックス

私は20年間、自分がやってきたことに諸手を挙げて「うぇぇぇぇい!推しのいる生活ハッピー❤️」で歩んできたわけではない、卑屈に色々と拗らせてる人なので、素直に「そうそうそうだよね!!!」とは全く言えません。

むしろコロナ禍によって引き起こされた移動制限は、実は私にとっては、心の平安をもたらした側面がありました。
というのも、あの頃、よほどの特権階級や仕事でもない限り、事実上誰もが外国への渡航を制限させられていて、自由にどこへでも行けるわけではありませんでした。

つまり、ある意味で誰にとっても平等でした。

長年私は、いつでも好きな時に彼の公演を追える世界のセレブなオペラファンはじめ、オペラに限らず好きな演奏家のために、欧米だけではなく、日本からも年に何度も海外に行ってる人たちに対して、強いコンプレックスを感じてきました。

1年に1回しか実演に行けない自分は、無価値で情けない、甲斐性なし人間で、こんな私が好きな演奏家のファンサイトをやっていいのだろうか?

もっと彼の実演にじゃんじゃん触れることができる人が、やるべきではないのかしら?
彼と全く違う文化・環境にいて、使う言語も全く違う私がやっていていいんだろうか?

ファンサイトをやる以上は、できる限り彼の歌を聴いて、公演に触れて、引き出しを多くしておきたい。
もちろん、データ的情報もレファレンスとして重要だけど、
それよりも大事なのは、表現者としての彼の意図を汲み取り、わからないながらも自分の中で理解を深め、かみくだいて消化(昇華)たものを、文章として形に残しておきたい。

私の目で見て、耳で聴いて感じた彼を、私はこのウェブの片隅の小さな場所に留めておきたい。

そのためには、本当は全部、聴いておきたい。

けど日本に住んでいて、家庭もある普通のパート主婦である以上、時間とお金のやりくりには限界があります。
それでもコロナ前には(力技で)家族の理解や渡り歩いてきた職場で融通を利かせてもらって、なんとかして1シーズンに1回は行けるように努めて、続けてきました。

無観客では意味がない???

パンデミックの最初の頃は、彼のスケジュールが次々とキャンセルされていくのを確認するのが、本当に、本当に辛かった。
毎回、頭を殴られたような、気が遠くなるような感覚に陥りました。
もうこれ以上、彼から仕事を奪わないでほしいといつも思っていました。

(6月下旬〜7月のシドニーでの、初演三日前にロックダウンに入ったが為にキャンセルされた「アッティラ」は、それとは比較にならないくらい悔しくて辛かった・・・)

だからたとえ無観客でも、ステージに立つ機会があれば歌ってほしいとも思っていました。
そういう場合は、ストリーミングすることも多かったし….(そうすれば私はいながらにして彼を見られる、聞けるし)

なので、コロナ禍で受けたインタビューの中で、彼が強く「無観客では意味がない」と言い切っていたのは、私にとってちょっと意外でした。

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彼にとっては「(どういう状況ででも)歌えればいい」というわけじゃなかったんだな。。。って。

見てくれる人がいて初めて舞台は成り立つんだ、ケミストレーションは双方から生まれるものだから、との彼の主張は、頭では納得はできるんですが

「。。。ということは、やっぱりいつでも舞台を観に来てくれる人のほうが(私みたいなデータや情報だけで盛り上がれる変態よりも)ありがたいってこと?!」

と、穿った見方をしてしまう私がいてですね。。。(⇦拗らせている)

じゃあヴァラリンさんの【推し活】は苦しいだけですか?

それは違います。

アラフィフ→アラカンに移行中の私にとっての20年間という、人生のほぼ3分の2の長さを、彼の歌と過ごしてきました。
彼のことを知らない人にも、できるだけ良い形で知ってほしいという願いを込めて、ビデオクリップを作ったり(YouTubeの登録者数ももうすぐ800名まで到達!ありがとうございます)

https://www.youtube.com/user/darkhoneybass

自分なりに色々と、どうやったら彼にとってプラスとなる活動になるのか悩み、考えながら、20年間活動してきました。

最近では、日本のみならず世界の若いバス歌手さんから
「ヴァラリンさんのサイトを通じて、ヴィノグラードフさんを知りました。ビデオクリップも参考にしています」
など、そういう方面からの嬉しい言葉も増えました。

その他、インタビューを受ける機会も増えて、その紹介にも力を入れています。

2019年に来てくれた松本での「エフゲニー・オネーギン」でのグレーミンは、私にとって人生の奇跡。

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こういった小さなことも含めて、彼に関する全てが、私の喜びです。

私の追っかけ活動(推し活)は「苦しみを含めての喜び」

不十分だと思いつつも、一人の演奏家に特化したウェブサイトを20年間維持してきたことは、自信を持ってもいいのかな…
2004年12月から2025年9月までの足掛け20年で、ライブで聴けた回数は54回。

頻繁に行ってる方の足元にも及びませんが、それでも50回(目は2019年の松本での「オネーギン」千秋楽でした)は超えているのだな…と、じわじわ喜びを感じています。

色々迷ったり悩んだりしながら、これから先も私のやり方で彼を応援していくことでしょう。
最近は(SNSが苦手なw)ヴィノグラードフも(鍵付きだけど)Instagramのアカウントも開設してくれていることから、
メモがわりにインスタに公演情報を載せて、済ませていたけれども

こちらも真面目に更新して行かないと。との決意を新たに…
だって、20年やってきたんですよ?これは一応、自慢してもいいと思っているの・笑

昨年12月にサイトのデザインを改変したけど、なんとなく見辛いので(^^;; もう少し改善したいと考えております。
2011年にWordPressを使いはじめた頃からは想像もつかないほど、最近は操作も簡単になっているし…頑張るわ!

ヴィノグラードフさん、20年間元気に活躍してくれてありがとう。
私に貴方のファンサイトを任せてくれてありがとう。

今シーズンは10月6日から、METでの「夢遊病の女」ロドルフォでのスタートとなります.

現地へ行けない民としてはありがたや〜〜〜!のライブビューイングにかかりますよ!日本では11月21日〜27日まで。

https://www.shochiku.co.jp/met/program/6903/

とにかく、彼が健康で幸せでいてくれること。なんつったって彼も来年は50歳ですから^^;

コロナ禍の後、2023年11月に足を運んだドイツ・ハンブルクでの「ドン・カルロス(フェリペ2世)」が直近での私のヴィノグラードフ・ライブ鑑賞となっています。

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円安の影響+同居している実母(90歳)のことを考えると、当面は長期で家を空けることができず。。。で、コロナ禍前の「ネンイチオッカケ」を敢行するのは厳しくて。

いつか近い将来に。
私が大好きな演目の、タイトルロールを歌う日が来たら。

その時こそは、現地へ出向いて、彼の歌声を浴びるほど聴いて耽溺したいな、と思っています・笑

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