インタビュー:2021年2月「僕たち芸術家は今、檻の中にいるようなものなんだ!」後半(パンデミック下のオペラ歌手として)

5月26日現在、とりあえず完成。。。特にフランス語に精通なさっている方、原文と照らし合わせておかしな訳があればご指摘願えれば幸いです。
PDFファイルも用意しました →→→ こちら

PDF flie is available →→→ here (Translated French to Japanese)

先日オーストラリアはメルボルンでの「アイーダ」と「エルナーニ」で大成功を収めたアレクサンドル・ヴィノグラードフ。

今年2月、バルセロナでの「ホフマン物語」(悪魔4役)に出演後、フランスのメディア【Toute La Culture】(掲載は2月21日)で受けたインタビューを日本語に直しています。

★フランス語の原文はこちら★

★前半は⬇️

インタビュー:2021年2月「僕たち芸術家は今、檻の中にいるようなものなんだ!」前半(経歴その他、レパートリーについて)

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アレクサンドル・ヴィノグラードフ:僕たち芸術家は今、檻の中にいるようなものなんだ!(後半:パンデミック下のオペラ歌手として)

Photo by Polina Plotnikova

松本でも使われていた、オフィシャルフォトの中で一番好きなやつ。Photo by Polina Plotnikova

(インタビュアー: Paul Fourier このインタビューは、2021年2月21日【Toute La Culture】に掲載されました)

公演には観客がいなければ意味がありません

Fourier(以下F):今の時代、リハーサルや公演のために海外に行くのは大変なことではないでしょうか?どのように感じていますか?

Vinogradov(以下V):あまり良くはありませんが、しかし僕は幸運にも、このパンデミックの間も、自分の仕事を続けられています。
バルセロナでの『ホフマン物語』その前にチューリッヒとフィレンツェに行ったときも、僕はとても恵まれている…と実感しました。

しかし、現在の状況は残念ながら完全に破綻しています。パンデミックが始まった当初は、家庭を持つ身として、自分の経済状況がどうなるのかを心配していました。

でも今は、自分がアーティストとして今後どうなっていくのか、ということの方がずっと気になっています。
なぜなら、アーティストには舞台と観客が必要だからです。
これに取って代わるものはないのです。公演には観客がいなければ意味がありません。 聴衆がいなければ、そこは劇場とは言えません。

確かに、ストリーミングは一時的に我々の気を紛らわせることは可能ですが、生の公演とはかけ離れているものです。

芸術家は、ステージに立たないと自分のアイデンティティを失う

F: ここ数ヶ月、テレビやウェブサイトであまりにも多くのストリーミングが行われてきたので、人々はそれに飽きているのだと私は感じています。皆、劇場に戻りたいのです。

V: 僕が解決策を提案するのは非常に難しいのですが、劇場やコンサートホールを再開することがいかに重要であるかを政治家に理解してもらう必要があります。世間はこれを望んでいます。

僕は芸術家だけの話をしているのではありません。
もちろん、僕達は劇場の再開をとても必要としています。特に、僕たちの職業では心理的な問題やうつ病を患う同僚が増えていますし、経済的に大きな問題を抱えている人もいます。

そして何よりも、芸術家はステージに立たないと自分のアイデンティティを失ってしまいます。

決断を下した人(=為政者)には、僕たちの職業を奪った時の、その決断の結果(が何をもたらすのか)を理解してもらう必要があります。

これは恐ろしいほどの拷問です。

フランス国王ルイ11世は、敵を身動きの取れない小さな檻に閉じ込め、立つこともできないようにしたまま、彼らを数年間「保管」していました。
目に見えない拷問のようなことが、この1年で世界中の芸術家に対してに行われたことだ・・・と感じています。

僕たち芸術家は今、檻の中にいるようなものなんだ!

また、多くの聴衆も同じように感じていると思います。
オペラ愛好家の方々から「劇場に行くことが許されないので、生きている実感がない」という手紙をもらうことがあります。

政治家の方々には、強いることではなく、可能性を開くような視点で考えて頂ければ…と思います。可能性はあります。
スペインやモナコでやっていることは悪くないと思いますよ。

では、なぜドイツやフランス、イタリアなどの国で、同じことをしないのか?

注意事項が守られていれば、劇場に行くことは他の活動よりも危険が少ないという研究結果があります。
憂鬱な1年を送ったからこそ、人々は劇場やコンサートを必要としているのです。

F:フランスではこの問題について大きな議論が行われています。多くのアーティストがラジオやテレビ、インタビューに登場し、劇場の再開をお願いしています。
しかし、フランス政府は文化を「非本質的」な活動と分類しているため、政治的な選択となっています。
そしてすでに多くの民衆がこの「決まり文句」に衝撃を受けています。

V:同じことはドイツでも起こっています。これは全く受け入れられないことです。間違っています。
今の時代、何が必要なのでしょうか?

失礼ながら、下品で恐縮ですが、人間は食事をして、消化器官に負担をかけない為の排泄をするだけの存在でしょうか?

それが全てではありません。それだけでいいのですか?

このパンデミックの拡大を防ぐために、僕たちがこんにち支払っている代償は少々高すぎるのではないか?

F:いっぽうでフランスでは、クリスマスショッピングのために全てのデパートが営業していました。
しかしこの数週間、ウィーン、マドリッド、バルセロナでオペラを観に行くたびに、デパートやパリの地下鉄よりも劇場の方が安全だと感じていました。

V:政治家がいかに人間を大切にしていないかを示すものだと思います。彼らの考えは、国民の基本的なニーズは食べ物と買い物に行き着くというものです。
それが必要不可欠なものであり、その他のものは存在しません。

僕も残念ながら、(*1)このパンデミックで大切な人たちを亡くしました。ですから、軽々しくは言えません。

しかし、ここで人間の命の価値(値段)とは何かという、奇妙で倫理的に難しい問題が出てきます。私たちの文化では、「プライスレス」と言いますが、これは真実ではありません。
道路を作るときに、より安全にするために少し太くしなければならないとなると、お金がかかり、価格を計算することになります。その安全性を高めるための代償は、ある意味では人命の代償でもあるのです。

このパンデミックの拡大を防ぐために僕たちが支払っている代償は、少し高すぎるのではないかと自問自答する必要があるのです。
そして、それが引き起こす弊害も忘れてはなりません。

景気の話だけではありません。学校に行けない子どもたちにかかる精神的負担を考えてみてください。それは本当によく考えなければならないことです。
人間を、食べたり買ったりするためだけの生き物として扱うことはできません。文化的、社会的な側面を強く再考する必要があります。

F:未来を予測することは非常に難しいですが、どのような計画をお持ちですか?

V:もちろん、現時点でこの話をするのは非常に難しいことです。もちろん、プロジェクトもあります。主にヴェルディで。
現在、稼働している劇場は、主にスペイン、ロシア、オーストラリアでもそうだと思います。
例えば、オーストラリアでヴェルディの公演を予定しています。アッティラ、アイーダ、エルナーニ…

また、ミュンヘンでの公演、ハンブルクでのルイーザ・ミラーとシモン・ボッカネグラ、ロイヤル・オペラでのナブッコ、ウィーン国立歌劇場でのカルメンとアイーダ、マドリッドとチューリッヒでのナブッコ、チューリッヒでのヴェルディのレクイエムとシチリアの晩餐会などの予定があります。

見ての通り、ほとんどヴェルディだけです。しかし、スケジュールの構築が基本的にストップしているため、スケジュールには大きな穴が開いています。

以前はとても忙しく、常に予定が入っていて1年のうち10ヶ月は旅に出ていました。来シーズンの予定は6、7ヶ月分しか入っていません。僕にとって非常に奇妙で、滅多にないことです。

先ほども申し上げたように、最も重要なのは、生きていくために働かなければならないということではなく、
44歳という年齢は、私のような歌手にとって、芸術的に言えば、おそらく「黄金時代」なのです。だから、できる限りのことができないのが残念です。

しかし、僕が言っているのは今年と来年のことであって、その後は良くなると期待しています。

F:アメリカで、例えばニューヨークのメトロポリタン・オペラで歌う予定はありますか?

METとは、今年2月、3月、4月に契約を結んでいました。ご存知のように、すべてキャンセルされました。また、5月と6月にモントリオールとワシントンでコンサートを予定していましたが、これも中止になりました。

F:アメリカでも、ロンドンでも、すべてが完全にストップしている状況は異常です。

これは恐ろしいことで、想像を絶するものです。しかし、アメリカのシステムは、収入は主にスポンサーとチケット販売によるものであり、ヨーロッパ大陸のシステムとは大きく異なります。そのため、現在のような状況では生き残れません。

さあ、この期間は楽観的であるべきだと思います。今の僕を支えているのは、ベートーヴェンのソナタの楽譜がピアノの上にあり、電子書籍端末に本が入っていることです。
こういった活動が僕の生きる糧となっています。

近いうちに元に戻り、自分たちの夢や情熱を観客と共有し、自分たちの仕事で人々を幸せにし、観客の感情を揺さぶることができるようにしたいです。

F:世間はそれを期待していると思うのですが…

そうしたいですね。みんなが、一緒にいること(時)の素晴らしさを忘れないでほしい。文化的なイベントに戻ってもらえるように….
文化や音楽の役割は、社会の中でとても重要だからです。
今の時代、政治家と様々な文化の代表者が同じテーブルにつくことが必要です。

なぜなら、今日の社会では、文化の役割が明らかに過小評価されているからです。

F: 政治家の耳に届くように、アーティストの考えを表現できるのは良いことですし、参考になります。

政治家がこの記事を読んで、僕たちアーティストが文化について語ることを考慮に入れようとするかどうかは、今後の注目すべき課題です。

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(*1)スヴェトラーナ・ネステレンコさん。ヴィノグラードフのヴォイストレーナーとして長年、彼と一緒に仕事をしてきた先生が昨年11月にCOVIDで亡くなっています…

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