蔵出し鑑賞記:190820-22-24 エフゲニー・オネーギン@セイジ・オザワフェスティバル 最終回 アレクサンダー・ヴィノグラドフのグレーミン編

💟最高の指揮者とオケと共演者と大好きな人の歌声に包まれて💟
何から書こうかしら(笑)

アレクサンダー・ヴィノグラドフがグレーミンを歌ったのは2度目。最初は6年前(2013年)トリノでの公演でした(指揮はノセダ。ROHのカスパー・ホルテンの演出とのコープロ)
この時はラジオ放送もありましたし、実演も見に行ったんですけど
演出面での記憶の方が強く、歌は(もちろん良かったんだけど)YTに上げているラジオ放送の時の音源で記憶を補完している・・そういう感じ。

蔵出し鑑賞記:2013年5月トリノ・レッジョ劇場での「エフゲニー・オネーギン」

一連の、松本でオネーギンをやるというニュースの流れでグレーミンがヴィノグラドフらしいとの情報が流れてきたのは2019年の春。
2018年夏の、藤原歌劇団での「ドン・ジョヴァンニ」を降板した時に、私はもう2度と彼を日本で聴くことはできないかもね…と覚悟していました。

なので、まさかこういう形で彼の5年ぶりの来日が叶うことになるとは。
松本という、東京ではない地方都市での公演(以前から東京以外の日本の街にも行ってみたいと言ってた)
そして初顔合わせとなるファビオ・ルイージとの共演・・そして彼の母国語の作品であるという嬉しさ。

最近のヴィノグラドフは(昨年、今年と2年連続でMETのライブビューイングでも披露した)十八番のエスカミーリョや、ヴェルディの中くらいのバス役が多く、それはそれで嬉しいことだけども、
私にとって、やっぱり彼のロシアものは格別。それを日本で聴ける、日本のお客様に聴いてもらえるんだ・・・と思うだけでも、逸る気持ちは抑え難く。

なんとか仕事の算段をつけて3公演、文字通り「通い」とおした感想は、やはり全部行って良かった。
一つとして同じ舞台はありえないし、その時々の彼の歌、仕草、声を全て目にも耳にも心にも焼き付けようと頑張ってみるけど、そういうわけにもいかない。

だったら数をこなすしかない…できるだけ日本に来てくれる時には全部行きたい、それは、もしも自分が行かなかった時の舞台がものすごく良かったとしたら、それを私の言葉で語れなくなるのが悔しいから。

初日に各人のアリアのテンポがものすごくゆったり、たっぷりしていたことに驚いたルイージの指揮ですが、そのテンポ感をちゃんと感じ取って表現していたのは、タチアーナのアンナ・ネチャーエヴァであり、グレーミンのヴィノグラドフの両ネイティブ歌手。
彼の出来が一番良かったのは、カテコでも一番多く拍手をもらっていた2回目だったと思います。ルイージの求めに完璧に応じていました。
その所作と声とフレージングの隙のなさで一気に場を持って行き、アリアの最中、観客が聴き入って場の雰囲気が一変したのを感じました。

割と長いしw繰り返しの多いグレーミンのアリアですが、出だしは控えめに、後半にピークを持ってきた感じで、同じように繰り返しているわけではない。並みのバス歌手が何の工夫もなく繰り返しているのを聴くと、なんて通俗的で退屈なアリアなの・・と、聴くのを途中で投げ出しますけど
ともすれば止まってしまいそうなぐらいの、ルイージのあのたっぷりしたテンポに、ロングブレスとワイドレンジで自在に声をメロディに乗せ、観客を飽きさせないどころか、あのアリアで場を持っていく・・・って、ただただすごいと思いました。

上から下までよく鳴る天性の美声を磨き上げ、こういうテクニックを身につける為に、彼が費やした努力や鍛錬はどんなものだったのか・・・と想像すると、込み上げてくるものが。

この役にどのくらいの力量の歌手を持ってくるか…ということで、3幕の印象は変わるな…と、改めて思いました。6年前に見た、トリノでの演出はオネーギンとタチアーナの最後の応酬場面でグレーミンが居合わせる・・というものでしたが、そういう小細工をしなくても、適切な歌と演技を持ってすれば、場をさらえるんだと。

今回は演技でも、なかなかいいところを見せていて。
舞台のしもてからタチアーナを連れてゆっくり公爵が入ってきた時「なんてお似合いの二人💟ごめんよオネーギン)」と思ったのはナイショ\(//∇//)\」

そして周りの人々と談笑しながらオネーギンに気がついた時…あ!君か!懐かしいな…!と喋り出しそうな雰囲気で
過去も何もかも、全てを包み込むようなとびきりの笑顔で歓待。ビスしてオネーギンにシャンパンを勧める…
あの場でその表情は反則よ\(//∇//)\

あの笑顔は、全てにおいて余裕を感じさせるポイントにもなっていたと思います。なのに人として全く嫌味なところがない。
役づくりの上で、すごく上から目線なグレーミンも散見しますが(そういうグレーミンは大概歌もなんだかモヤることが多い)

あんな風に自然体で振舞われたら、その方が心に傷を負っている手負いのオネーギン にはぐっさりと「刺さる」はず。

大西オネーギンもバキルチオネーギンも、グレーミンのアリアの最中に椅子にへたり込みましたが、あの気品溢れるグレーミンの圧倒的な存在感、包容力、幸福感は男として「この人にはかなわない・・」と思わせたというか。とどめを刺される打ちのめされ感があったと思います。
特に私が驚愕した2回目は出だしからたっぷり歌ってただけに尚更。

そのくせ、暖かく歓待しつつ惚気と説教もチクチク。
アリアの後でオネーギンをタチアーナに紹介した時、彼女が昔お会いしましたね…と歌うのを聴きながら、彼女の心が微妙に揺れたのを感じたかのように、彼の表情も少し変わる。でも彼女が「あなた、疲れたわ」と言うと「マイハニー、それは大変だ」と言わんばかりに手を握ってそっと支える…ジェントルで気品溢れる最高の大人の男。

そして二人は去っていく・・

「あああああ、なんで出番がこれだけしかないのよっ^^;;;お願い、もっと歌って」
とどれだけ願ったことか。

おかわりアンコール10回くらいお願いしたかった。去りゆく背中に熱い(暑苦しい)視線を送ってしまいました。。。

この役は、現時点ではヘビー級ロシアものはまだ避けたいと言ってる中での、貴重なロシアもののレパートリー。
これから先もずっと歌い継いでいく役だと思うけど、このテンポで歌うことはそうそうないだろうな・・・(ルイージの指揮でまた歌えば話は別だろうけど)

今回は主役が二転三転と交代し、チームオネーギンとしても色々落ち着かないこともあったと思いますけど、
特に大西さんが歌う時には、皆で盛り立てよう・・的な雰囲気が感じられました。最終日のカテコで大西オネーギンに万雷の労い拍手を浴びせているヴィノグラードフを見つめながら
「いつの間にか、彼も若手をサポートする側に回っているんだな・・」としみじみ。

若い時から比較的安定はしていたけど、9年前の、ある1公演ではあまりの不甲斐なさに終演後に引っ叩いてやろうかと思った新国フィガロの時みたいに「うまく歌って!」とハラハラドキドキしながら観た(ラジオ越しに聴いた)公演もあったから・・・

101016 ハラハラ ⇒ 怒りのち晴れ、そして涙…のフィガロの結婚@新国立劇場 3回目 | Russian Bass singer, Alexander Vinogradov Private Fansite
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こんなにも安心して、絶対的な信頼を置いて聴けるようになったこと。
最終日は私のヴィノグラドフ生舞台鑑賞50回記念公演でもありましたが、足掛け15年・・・ずっと見てきた私だけの宝物でもあるな・・と、一人、万感の思いに浸っていました。彼も歌い手として成長してるけど、私も聴き手として成長したな・・なんてね(笑)

去年日本に来られなかったことは本人も気にしていましたが、これだけ話題に上って、日本のオペラファンにとって最高の形で印象付けができた今回の松本の公演は、本人も忘れ難い思い出になったと思います。もちろん私にとっても。

なんと言っても、今回は共演者に恵まれました。やはりオペラは1人が良くても片手落ち。そういう意味でも、指揮者、オケ、共演者、そして松本という場の雰囲気…全てにおいて最高の公演でした。

短い期間ではあったけど、マエストロとの密度の濃い音楽体験は彼にとっても得難い幸せだったようで、一緒に仕事ができるのが本当に嬉しい・・と何度も言ってました。それがこの、日本で、Matsumotoという特殊な環境の中でしたけど、本当に私も嬉しかった。

決して歌うところが多くはない役のオファーを受けて、こんな遠くまで来てくれて、体調も崩さずに元気に3公演歌ってくれたヴィノグラドフに本当に感謝しています。貴方が歌ったからこそ、上演の質がぐっと上がったのは紛れもない事実。

そして松本まで足を運んで下さり、彼の歌声に耳を傾けて下さった方々や、松本まで来られなかったけど(私のおバカな松本通いを)頑張って!と言って下さった方々。
多くの方が「素晴らしいグレーミンだった」と言って下さったことも含め、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

これから先、何処かの公演でAlexander Vinogradovという名前を見かけ「あ、松本オネーギンでグレーミンを歌ってた人だ!」と思い出して下さる方のためのレファレンスとしてのこのファンサイト、そして念願の彼様ご本人のオフィシャルサイトも、時々覗いて下されば、望外の喜びです。

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でもほんっと、ほんっっっっっっっっっっとに松本に来てくれて嬉しかった。何度お礼を言っても足りないわ〜〜(笑)
そしてほんっと、あんなに素晴らしい公演だったのに、ほんっっっっっっっっっっとに映像収録も、音声収録もしていないことがほんっっっっっっっっっっとに悔しいです(笑)

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行くだけで大変だったけど、無事3公演コンプ💟

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ロマンティックの極み💟ファビオ・ルイージのオネーギン、オリガのことなど

蔵出し鑑賞記:190820-22-24 エフゲニー・オネーギン@セイジ・オザワフェスティバル その4ファビオ・ルイージの「オネーギン」その他編 | Russian Bass singer, Alexander Vinogradov Private Fansite
「爆音、ロマンティックの極み」 ファビオ・ルイージが松本でオネーギンを振るというニュースが流れたのはちょうど今から一年くらい前。誰が歌うにしても1公演は行くつもりでした。 私がルイージを初めて聴いたのは、2004年夏、初…

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■チャイコフスキー:オペラ《エフゲニー・オネーギン》
2019年8月20日(火)開演 18:30、22日(木)開演 15:00、24日(土)開演 15:00(約3時間、休憩1回あり)
まつもと市民芸術館・主ホール

セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」2019年8月20日、22日、24日

セイジ・オザワ 松本フェスティバル
●指揮:ファビオ・ルイージ
●演出:ロバート・カーセン
●出演
エフゲニー・オネーギン:レヴァント・バキルチ (20日、22日は大西宇宙)
タチヤーナ:アンナ・ネチャーエヴァ
レンスキー:パオロ・ファナーレ
オリガ:リンゼイ・アンマン
グレーミン公爵:アレクサンダー・ヴィノグラドフ
ラーリナ夫人:ドリス・ランプレヒト
フィリーピエヴナ:ラリッサ・ディアトコーヴァ
トリケ:キース・ジェイムソン
隊長、ザレツキー:デイヴィッド・ソアー
合唱:東京オペラシンガーズ
ダンサー:東京シティ・バレエ団
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ

August 20, 22, and 24, 2019 Matsumoto Performing Arts Centre Main Hall, Nagano, Japan

In Russian with Japanese supertitles

Cast
Eugen Onegin: Levent Bakirci (Aug.20 and 22 Takaoki Onishi)
Tatyana: Anna Nechaeva
Lensky: Paolo Fanale
Olga: Lindsay Ammann
Prince Gremin: Alexander Vinogradov
Madame Larina:Doris Lamprecht
Filipyevna:Larissa Diadkova
Monsieur Triquet:Keith Jameson
Captain, Zaretsky: David Soar

Chorus: Tokyo Opera Singers
Dancer: Tokyo City Ballet

Saito Kinen Orchestra

Conductor: Fabio Luisi
Director: Robert Carsen
Revival Stage Director: Peter McClintock
Set and Costume Design: Michael Levine
Original Lighting Design: Jean Kalman
Lighting Design: Christine Binder
Chorus Master: Marcovalerio Marletta
Choreograph: Serge Bennathan
Canadian Opera Company Production
This production of Eugene Onegin was originally created for the Metropolitan Opera

Levent Bakirci, the Baritone of the 2019OMF Opera Tchaikovsky “Eugene Onegin” scheduled for Aug 20(Tue) and 24 (Sat), due to health reasons has canceled his appearance.
He will be replaced by Takaoki Onishi.

Due to a knee injury, Mariusz Kwiecien, who was originally scheduled to sing Eugene Onegin, will be replaced by Levent Bakirci.

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