蔵出し鑑賞記:2013年5月トリノ・レッジョ劇場での「エフゲニー・オネーギン」

もうすぐセイジ・オザワフェスティバルでの「エフゲニー・オネーギン」

アレクサンダー・ヴィノグラドフがグレーミン公爵で出演します!!5年ぶりの来日にワクワクしてますが、彼が6年前にイタリア・トリノで同役を歌った時の蔵出し鑑賞記。

開幕を前に、ツイッターのフォロワーさんが面白い記事をあげてくださったので、便乗して蔵出し鑑賞記です。(いちおう広報活動も兼ねているのヨ)

N公爵とグレーミン公爵 – Eugene Onegin 考察 – 世界観警察
こんばんは、茅野です。 松本が迫ってきてますね。感覚的にあと3週間くらいあるもんだとおもってたのでびっくりしてます(?) 早速ですが、今回は謎の多い人物・N公爵とグレーミン公爵について、相変わらず原作・オペラ・バレエ版を比較して考えていきたいとおもいます。お付き合い宜しくお願いします。 N公爵とグレーミン公爵 「タチヤーナの夫」といった時に、どちらの名前を想起しますか? N公爵 ▽ グレーミン公爵 ―――――――――――――――――――――――――――――― 原作に明るい方はN公爵、オペラ・バレエ版に親しい方はグレーミン公爵を想起したこととおもいます。 タチヤーナの夫にあたるN公爵及びグレーミ…

私が書いた元記事は⬇️

この演出は、2013年2月にROHでカスパー・ホルテンが出した新演出と同じものです。ROHの公演は、既にブルーレイも発売されています

5月25日と26日(最終日)の2回見たんですが、25日は左サイドのボックス席で、舞台の3分の2が見切れるという悪席。そのため、ちょっとよく把握できないままでしたが、翌日は平土間3列目でしっかり観れました。

もみあげつけて、初老の軍人さんに変装して頑張っていたヴィノグラードフのグレーミンは、私にとっては、そりゃもう素敵でした。
だいたいグレーミン侯爵は、比較的誰が歌ってもそれなりに形が出来るし、バスの声の深さが際立つ味わい深いアリアなので、もうけ役の一つとでも言うか…間違いの少ない役ですし。

往々にしてあま〜〜〜くなりがちなアリアでもあるんですが、彼はそこまで自分の声に耽溺しない。帰国してから初日の放送音源を聴き直してみると、
もう少し甘くデレッとしたところがあってもいいのかな…とも思います。その辺はもう少し、年を取らないといけないのかも(笑)

グレーミンのアリア。もう少しデレっとしててもいいかもね(笑)

この演出では最後のオネーギンとタチヤーナの応酬のところで、グレーミン侯爵が不意に現れ、二人の会話を聞いてしまい、愕然とする…という役割を担っています。
ROHでのグレーミンは、ベテランのペーター・ローズ。海坊主のような風貌でオネーギンを圧倒した彼が、最後には泣き崩れる(とまで言うと言いすぎかな)役作り。

ROHでのオネーギン最終幕。グレーミンはベテランのペーター・ローズ。

この場面、ROHでご覧になった方々には、すっごい不評で^^;
まあ…いい悪いは別にしても、とにかくこの演出では、グレーミン侯爵がここに「いる」ことは曲げようのない事実ですから、私としては、ヴィノグラードフもペーター・ローズのように、いくらなんでも泣くなんて、貴族の男性として、その振る舞いはどうなの?!と感じる振る舞いをするのかどうかが、鑑賞のポイントだったのです。

一回目(From Light-side box seat)の時は、この肝心の最終場面も、左過ぎて見えませんでしたから^^;;;;;
二回目はとにかく、それだけは意地でも確認しないと!と、気合い入りまくりでした。。。

で、出てきた彼を見て唖然。
前日見切れながらも一応もみあげのチェックはしていて、確かにつけてたはずなのに
この日はない!! しかも、髪の毛も前日はほぼ白髪にしていたのが、この日はうす〜く染める程度で、殆ど素頭に近い状態。

…あの。
これは、反則ですよ、は・ん・そ・く!!!!!!かっこ良すぎます(///▽///)

これじゃ退役軍人のはずはなく、オネーギンよりもちょっとだけ年長の、青年貴族じゃないか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
前日までは我慢したけど、やっぱり、もみあげは嫌だったの?^^;

とか、くだらないことが頭を駆け巡ったのですが、
「もしかしたら、この後速攻でパリに向かうの?」

ってことに、はっと気がつきました。この時の追っかけはトリノでの「オネーギン」と抱き合わせでパリでのショスタコ13番(ヴィノグラドフのオハコ)を一度に鑑賞できるからということで選んだんです。


26日がトリノでの最終公演、28日がパリでの13番。27日の朝一番から、パリで打ち合わせやリハーサルをする為には、どうしても26日中にパリへ移動する必要があったのでしょう。この日は15:00からの開演でしたから、夕方には余裕で終わりましたし。
トリノの街から空港までは、そんなに距離もないから、急げば最終便に間に合わないことはないか。。。

とか、舞台を見ながらそんなことをうっすら、考えていたのでした。
そして終演。カーテンコールでいの一番に、一人出てきた彼を見て、その予感が的中したことを確信したのでした。お疲れ様…としか、いいようがなかったです、ホントに。

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それはともかく、退役軍人のはずが、青年貴族グレーミンと化してしまうとですね…
あの、問題の最後の場面が、すっごく、説得力を持って迫ってきたんです。

初老の男性ならば、若い奥さんに裏切られて、情けなく涙する…というのもアリだと思わなくもないんですけど、
オネーギンとさほど年代が変わらないように見えるグレーミンが、一瞬うなだれたあと、
顔を上げて、出て行くオネーギンを見据えた時は「このまま一戦交えて、グレーミンがオネーギンを殺してしまうんじゃないかしら?!」というぐらいの殺気が漂い、
タチヤーナが「あなた、違うの…許して…」と言わんばかりに、グレーミンに駆け寄った後で、彼女に対して見せた疑いの表情は、涙を流すなんていう情けない姿ではなく、背筋がぞくっとするような、寒気さえ感じさせる、冷たいものでした。

あれでは、タチヤーナが泣き崩れても無理はない、彼女はオネーギンと一緒になれなかったことを嘆いているのではなく、今の大切な夫から突き放されたことに対する涙なんだわ…と、私には思えました。

これは狙ってこうなったわけじゃなくって、たまたま最終日の彼の事情がそうさせたんでしょうけど、これなら最初から、無理に老けメイクにしなくても、こうしておけばよかったんじゃないの?!
何がいい方に化けるか…って、ホントにわかんないです。舞台は水物、そのときそのときの一期一会なのですね。

トリノでの最終幕。グレーミンの所作の違いに注目。ちなみにこの日のオネーギンは今秋新国立劇場の「オネーギン」タイトルロールのヴァシリー・ラデュク。

(リハーサル&ゲネプロの映像が混じっているんですが、最後の場面のイメージはこういう感じ。ROHのと比較すると、同じ舞台でも演じる人によって、随分印象が変わるな・・・と思います)

・・・さて。松本ではどんなグレーミンを聴かせてくれるんでしょうねえ(笑)

楽しみです💟


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Evgenij Onegin(Eugene Onegin)

Teatro Regio, Venerdì 17 Maggio 2013 – Domenica 26 Maggio 2013

Evgenij Onegin :baritono Vasilij Ladjuk, Vladislav Sulimskij (18, 23, 25)
Tat’jana, figlia di Larina :soprano Svetla Vassileva, Radostina Nikolaeva (18, 23, 25)

Vladimir Lenskij :tenore Maksim Aksënov, Aleksej Tatarintsev (18, 23, 25)
Ol’ga, figlia di Larina :contralto Nino Surguladze, Iryna Zhytynska (18, 23, 25)

Il principe Gremin :basso Aleksandr Vinogradov
La vedova Larina,possidente :mezzosoprano Marie McLaughlin
Triquet, un maestro di francese :tenore Carlo Bosi
La njanja Filipp’evna :mezzosoprano:Elena Sommer

Un Capitano della Guardia :basso Vladimir Jurlin, Marco Sportelli (18, 22, 24, 26)
Zareckij :basso Scott Johnson
Guillot mimo :Giuseppe Cannizzo, Andrea Frisano (18, 23, 25)
La giovane Tat’jana mimo :Francesca Raballo, Veronica Morello (18, 23, 25)
Il giovane Onegin mimo :Andrea Frisano, Giuseppe Cannizzo (18, 23, 25)

Direttore d’orchestra :Gianandrea Noseda
Regia :Kasper Holten
Scene Mia Stensgaard
Costumi Katrina Lindsay
Luci Wolfgang Göbbel
Coreografia Signe Fabricius
Video Leo Warner e Lawrence Watson
per 59 Production
Aiuto regista Justin Way
Costumi ripresi da Elena Cicorella
Luci riprese da John Charlton
Coreografia ripresa da Toniah Pedersen
Video ripresi da Benjamin Pierce
Maestro del coro
Claudio Fenoglio

Orchestra e coro del Teatro Regio

Nuovo allestimento in coproduzione con
Royal Opera House Covent Garden, Londra
e Opera Australia

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