110613 ロメオとジュリエット@ミラノ・スカラ座(2回目全体の感想編)

今回の公演は前述したように、DVDが出ている2008年のザルツブルグのプロダクションと同じです。

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スカラ座バージョンの今回は、今話題のテノール、ヴィットリオ・グリゴーロ(Vittorio Grigolo)のロメオに、こちらはDVDと同じく若手ソプラノのニーノ・マチャイゼ(Nino Machaidze)のジュリエット。スカラショップにも、二人をフィーチャーしたコーナーが設けられていて、CDがわんさと積み上げられておりました。

そのヴィットリオ・グリゴーロですが、数年前からkeyakiさんが熱心に紹介して下さってますし、既に海外で彼をお聞きになったことのある日本人ブロガーさんもかなりいらっしゃいます。

特に昨年のROHでの「マノン」や、メトでの「ボエーム」の時には、現地在住のオペラブロガーさんが多い故、色々と興味深い感想を読ませて頂いてましたが、どこの劇場での感想にも共通しているのが「声が大きい」ということかと思います。

で、私もご多分に洩れず…

…いえね。

スカラ座は想像以上に小さいオペラハウスですし、歌手に優しい、音響の良いオペラハウスだということを割り引いても

「…こんなに耳が痛くなるほど大きな声の歌手、今まで聴いたことがないよ^^;」

というのが、正直な感想です。それが如実だったのが、3幕の、ローラン修道士との絡みの場面。
もちろん、そこに至るまでに「確かにデカイ声だわ~~~」と思いながら聴いていたんですが。

このシーン、予め映像で、舞台右端で歌われることがわかっていたので(多少遠かったとはいえ)平土間は絶対に右端にするぞ!と、残席少ない中、かろうじて空いていた17列目の右端をゲットしたようなものでしたから、それはそれは、楽しみにしていたのです。

ロメオがローラン修道士を突き飛ばしそうな勢いで走ってきて、修道士とちょっとやりとりしたあとに歌う「彼女が来ました!」と歌う”La voici!”の、でかさと言ったら!

ヴァラリン、耳がキーーーーーーーーンと響いて、びっくりして心臓が口から飛び出すんじゃないかと思いましたわ。
良くも悪くも、あんな経験は初めて。もし彼が新国立で歌うようなことがあったら、脳天までどうにかなってしまうかもしれません(^~^+++++

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それから、演技が熱い!
敏捷ですし、走るシーンでは、恐らく全力疾走してるんじゃない?というぐらい、足が早いんです。
(BキャストのPortariよりも、明らかに早かった)
ですので、3幕最後のチャンバラ場面は、非常に見応えがありました。

また、熱が入り過ぎて、ロマンチックなシーンでも逆にコミカルに見えてしまうぐらいのところもあったり、多少、周りから浮いて見えることもあったり…
かなり、ナルシスティックなタイプかと見受けました。
双眼鏡で覗いた時に、服まで汗びっしょりに濡れているのを確認しましたが、あれなら、汗もたくさんかくよねぇ。。。と感心しきり。

しかし、意外だな、と思ったのは、お顔が甘いハンサムさんですから、声もそういう甘めの声かしら?と思っていたのですが、どちらかというと硬質で、金属的な感じの声に感じました。
また、強弱の付け方がかなり大げさかしら?僅かに泣きが入るような感じに聴こえることもあって、なるほど、確かにある意味「わかりやすい」演技歌唱でしょう。

彼のロミオは、その熱い演技と大きな声とが相まって、非常に直情的だと思いました。あまりこの作品に馴染みがないと言いつつ、CDでアラーニャのロメオに馴染んでいると、グリゴーロのロミオには、もう少し甘さ、柔軟性があっても良かったかもしれないと思います。歌の強弱が激しいことと、表現力や柔軟性とは別物だと思いますし。

それとチャンバラ場面からヴェローナ大公が出てきて、ロミオ追放を言い渡し「ああ、哀しみと恐れと涙の日よ」”Ah! jour de deuil”というロメオの独唱に、ソリストと合唱の声が重なる、非常に聴きごたえのある場面。私はこの場面を非常に楽しみにしてました。

11日の合唱の出来は「あれ?こんなもんかな?」という感じで、微妙に肩透かしをくらったのでしたが、この日は凄かった。
合唱とソリストの声が重なる場面というのは、私がオペラを聴く時に、けっこう重要視している箇所でして、この「ロメジュリ」も、この場面があるからこそ、克服できたようなものです。

しかし、劇の進行と自分の身体が一体となって、震えるような感覚にすら陥ったのは、2004年にベルリンで観た「ドン・カルロ」の異端審問の場面以来かも。スカラ座の合唱の底力を、自分の肌で感じた貴重な瞬間だったと思います。

このラストのロメオの「だが、あのひとにもう一度逢いたい!」”mais je veux la revoir!”の最後はハイCになっているらしいんですが
(CDのアラーニャは上げてます)
BキャストのPortariも、映像のヴィラゾンも上げてなかったので、ちょっと残念に思ってました。

ですが、高音域も強そうなグリゴーロならば、上げてくれるかもしれないなぁと楽しみにしていたのですが、結局上げませんでした・・・
もしかしたら、指揮者のネゼ=セギャンの意図なのかもしれませんが、上げた方が絶対に劇的効果倍増しますから、ここは頑張って欲しかったなぁ。

とにかく、私には全ての味付けが濃すぎるような気がしましたが^^;
役にふさわしい若さ溢れる情熱的なキャラクターのロメオは、非常に存在感が強かったです。

YTに隠し撮り映像がいくつか上がっているので、興味のある方はご覧になってみて下さい。最近のビデオカメラは(iPhoneにもついてますが^^;)随分性能が良くなったので、それなりによく撮れてます。 こちら ⇒⇒⇒

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お相手のニーノ・マチャイゼ@ジュリエットは、DVDで初めて観た時の登場シーンで
「なんだぁ?この異様にコドモコドモした、ぶりっ子めいた仕草はっ^^;;;;;」と、微妙に引いてしまったんですが、何度も見ているうちに

「まあ、ジュリエットは子供なんだしねぇ」とムリクリに納得。

それに、あの時はネトレプコがキャンセルし、代わりに彼女が歌ったということですから、そもそも演出自体がネトレプコ仕様になっているようにも見え、また、彼女もそういった「ネトレプコ路線」で演じなければならない呪縛にかかっているようにも見えました。

しかし、あれから3年。すっかりこの演出はネトレプコではなく、マチャイゼ自身のものとなり、また彼女も色んなところでジュリエットを歌うにつれ、自らのジュリエット像を確立したかな?と感じました。

映像でがっかりさせられた登場シーンでのお手手振り振り
(これが…なんというのか、無理に「ニカッ」と笑って、すごい勢いでぶんぶんと、招待客に向かってバイバイするような仕草で^^;)
も、今回はしっとり。「ニカッ」ではなく「にっこり」微笑んで、バイバイもさりげなく、な感じで◎。
少女らしいあどけなさを残しつつも、このぐらい落ち着いた仕草を見せてくれないと、やっぱり良家の子女ですもん。

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作品の中には、ロメオとジュリエットの二重唱がいくつか出てきますが、このカップルが一番良かったのは、結婚の二重唱かな?と思います。

ここは、追放されたロメオがジュリエットと最初で最後の一夜を過ごす、めくるめく愛のシーンでもあるわけですが、絶対に失ってははいけないのは、初々しさだと思うのです。

この演出では、白いシーツが被さった舞台に、ロメオが駆け込んできて、ジュリエットが傍においてある洗面器の水を使いながら、ロメオを膝枕して介抱してあげるシーンを、前奏曲に被せてあります。

全編どこを取っても美しい舞台装置でしたが、この場面が一番美しかった。ここでのマチャイゼ・ジュリエットの、逸るグリゴーロ・ロメオを優しく包み込むような、しっとりした表現と美しい表情には、本当に引きこまれました。

また、ネゼ=セギャンの指揮も、全体的にはロマンチック<ダイナミック路線で、それはそれで面白かったんですが、もう少し甘くしてもいいんじゃないかな?ゆったりさせて欲しいなと思った部分もありますが、
このシーンではドラマティックさが卓越していて、特に歌のないホントのラブシーン♪場面は、たたみかけるかのようなオケの雄弁さが、二人の情熱を余すところなく表現していて、目にも耳にも美しいシーンでした。

ジュリエットのアリアでは毒薬のアリア(ポイズン・アリア)の方が、有名な「私は夢に生きたい」よりも好きな私。
これ、旋律自体が激しい感情表現を要求しているとは思いますが、感情に任せてたきつけるように歌うのではなく、静かな戸惑いに揺れつつ、でも激しく…とでもいうのかしら。その辺りのさじ加減が、非常に巧かったと思います。

彼女の良さは、声自体がちゃんとソプラノの声だということ。ちょっと聴いた感じでは「まるでメゾ??」のような声のジュリエットよりは、私はこちらの方が好きです。
見た目にも声にもみずみずしさが不可欠という点でも、今の彼女には適役かな?と思います。良い時期に観られて良かったです。

グリゴーロにしろ、マチャイゼにしろ、5年先にはもっと成熟した歌唱を聴かせるでしょうけど、今の「危ういフレッシュさ」がその頃まで保たれているかは微妙。
そういう意味では、多少荒削りではあるけれども、何よりも「青春の息吹(←古っ^^;)」が大前提のこの作品を、今の時期に聴けたのは、とてもラッキーだと思います。

このペアで、もう一度聴きたかったなぁ。。。

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脇の歌手についてもちょっと。
映像で観ていた時から注目をしていたのが、ロメオのお小姓ステファーノのCora Burggraafと、ロメオの友人メルキューシオのラッセル・ブラウン、それからジュリエットの乳母ジェルトリュードのスザネ・レースマーク。

ステファーノのコーラは、可愛いんですが、立ち回りも本当にお上手で、男声陣を相手に頑張ってました。あのいわゆる「シャーベット・アリア」と言われるアリア、なかなか魅力的だと思うのですが、彼女の声には良く合っていると思いました。

メルキューシオのラッセル・ブラウンは、映像で観ていた時から「きっぷのいいお兄さん」風な感じで注目。
ちょうど「ボエーム」で言うところのマルチェッロみたいな役回りで、なんとなく好感度の高い役柄ではないでしょうか?

(なーんかね、特にこの演出で観ていると、ついロメオ陣営に肩入れしたくなります(笑)ジュリエット陣営って、お父さんのキャピュレット伯爵をはじめ、ティバルドもパリスも、な~~んか、いけすかないヤツ(笑)が揃っている気がして^^;)

彼も立ち回りが凄いんですよ~~歌の方は、映像の時の方がキレてましたが(「マブの女王のバラード」も楽しみにしていたんですけど、ちょっと・・残念でした)
その分演技は今回の方が冴えわたっていて、しつこいですがチャンバラ場面は、本当に凄い迫力でした。近くで観ていたら、もっと興奮度が増したかも(笑)

ジェルトリュードのスザネ・レースマークは、実はシンガポールでの「エレクトラ」(ヴィノグラドフがオレストを歌ったコンサート形式での上演)で、クリテムネストラを歌っていた時に「おおっ、この人素晴らしいメゾだわ!!」と密かに驚嘆した方。
なので今回、また聴けるのをとても楽しみにしていたのですが、期待にたがわぬ歌唱でした。

イマドキの歌手としてはあるまじき?!かなりフクヨカさんなんですけど、やっぱり声(特に低音)の迫力が凄いんですよ。身体全体を鳴らすような感じで。
また、大柄な身体を生かしてコミカルな部分も見せて下さって、役に良く合っていたと思います。歌うところが少なくて、勿体なかったと思うぐらい。
来年6月、新国立劇場での「ローエングリン」では、オルトルートに配役されていますので、予定通り来て下さるといいな…と思います。

演出は(再三申し上げているように) 映像で観られるザルツブルグでの演出と同じ。但し、劇場のつくりの関係で、微妙に簡素化されている部分はありました。
(たとえば、ザルツブルグの場合はオーケストラボックスと客席との間に、一本通路があるので、そこから人が出入りしたりとかいうことが、今回スカラ座ではできなかったので、普通に舞台袖から出入りする形になったりとか)

衣装も舞台装置も本当に美しいですし、オペラの演出はどんな形でもありうる…と思っている私ですが、こういう「純古典作品」は、あまりいじらない方が、作品の良さが伝わる気がします。
現代に置き換えた演出も色々とありそうですが、今のところ、この作品においては、この演出がマイベストかもしれない…と思いますし、思い出に残る上演でしたから、記憶の上塗りを、今はまだしたくないなぁ…というのが本音かも。

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一か所だけ解せなかったのは、冒頭の前奏曲の場面で(多分)キャピュレット家の女中さんが、食卓の準備をしている最中に貴族の男数名にレイプされるシーン。
この貴族の男たちが何者なのか、何度映像を見てもわからないし、実演でもやっぱり、わかりませんでした。

ロメオ陣営の男性たちの仕業?とも思いますが、なんとなくいでたちが違うので(笑)
ジュリエット陣営、つまり、自分たちの家の女中さんを力づくで…という、な~んか、やっぱり「いけすかない奴ら」を印象付ける為だったのかなぁ…?とも思ったり。

その後、劇が進行してもこの演出に、そういった暴力シーンは出てきませんし(やるとすれば、ステファーノにジュリエット陣営がオイタする…っていうのが、常套手段かな、と…)やっぱりあれはいらん!!と、私は思いました)

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さあて。
誰かもう一人重要な脇役、忘れてませんか?(笑)

いえいえ。わすれるわけないじゃないですか。
その方…ローラン修道士については、別立てでたっぷり語ります。

ということで、まだまだしつこく、続きますからネッ;)

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Direzione
Romeo et Juliette
Charles Gounod

Direttore Yannick Ne’zet-Se’guin
Maestro del coro Bruno Casoni
Regia Bartlett Sher
Scene Michael Yeargan
Costumi Catherine Zuber
Luci Jennifer Tipton
Maestro d’armi B.H. Barry

Cast

Juliette Nino Machaidze
Romeo Vittorio Grigolo
Frere Laurent Alexander Vinogradov
Mercutio Russell Braun
Stephano Cora Burggraaf
Le Comte Capulet Franck Ferrari
Tybalt Juan Francisco Gatell
Gertrude Susanne Resmark
Le Comte Paris Olivier Lallouette
Gre’gorio Ronan Ne’de’lec
Benvolio Jaeheui Kwon
Le Duc  Simon Lim

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