130525ー26 エフゲニー・オネーギン@トリノ王立歌劇場(レッジョ劇場)愛しのグレーミン侯爵編

(すごく長くなったので別建てにしました・・・全体編は=>=>=>

131203-05なんせ半年も前のことになってしまったので、正直な所、細部は忘れてます。その為、レポというよりも、私の心の葛藤とでもいうか(特にこのグレーミン編は^^;)
そのようなことの羅列になってしまうことをふまえて読んで頂けるとありがたいです。

先に見たのがBキャスト最終日の日(5月25日)で、この日の席は劇場レポに書いたとおり、2階(この劇場はアリーナ形式なので、2階までしかありません)の左サイド寄りのボックス。

この演出は、今年2月にROHでカスパー・ホルテンが出した新演出と同じものです。ROHの公演は、既にブルーレイも発売されています
チケットを買う時期に、一瞬だけ全曲が某所に上がった瞬間があり、その時にグレーミン侯爵が左サイドで歌うことが多いのを確認していたので、左なら大丈夫だろう…と思い、思いっきり左寄りにしたのが大失敗。

ここで見ていた時は「3分の2ぐらいは見えてるかな・・」と思っていたのですが、翌日、平土間に座ってみて、奥行きも殆ど見えていなかったことが判明。
なので、実質的には半分も見えてませんでした。

131203-01しかも、そのボックス席で同室だったご婦人が(定員4人ですが、私ともう一人しかいなかったの)
途中で鼻を噛んだり、痒いのか?首元をしきりに叩くように掻いていたりとかで落ち着きがなく、私も気が散ってしょうがない。
まあ確かに、Bキャストのレンスキーは、水準に達してないな…と私も思い、少し退屈してしまいましたが(2幕では頑張っていたので、尻上がりに調子が上がって行くタイプの歌手さんなのかも)
それにしても、そういう歌手が歌っている時に、聴く気が全くないのが同席の私にも伝わってくるのは、どういう態度なんだろう…

この演出では、1幕〜2幕のタチヤーナの命名式でのすったもんだまでが前半、オネーギンとレンスキーの決闘〜3幕最後までを後半という変則割りだったので、休憩は一度のみ。
幸い、休憩後はそのご婦人が戻って来なかったので(空いていたので、平土間の空いている席へ移動された模様)私は一人でボックス席を占領…^^;

ふう。。。やれやれ、これで一人になったわ…

え?
もしかして私、この空間で、彼の声…独り占めできちゃう?
泣こうがわめこうが…自由……・か・・・・・な…………………???????

ということに気がついてしまい、一気に鑑賞モードから感傷モードへシフト…..

3幕の序曲あたりから怪しくなってきて。。。
左に寄りすぎているボックスからは彼の姿は、3分の1くらいしか見えませんでしたが、姿が見えずに声だけ聞こえるというのが、更にナントカな気分を増長させ…あああ、あんなに泣いたのはいつぶりだったんだろう^^;

だって、一年半ぶりに聴いた、生の声だったんですもの!!!更に深くなった低音が、空間にも私の聴覚にも響く響く。
泣き虫の私でも、劇場であんなに声を出して泣いたのは、後にも先にも(にしたい^^;;;;;)初めて。

…劇場で彼の声を独り占めできた、すっばらしく贅沢な時間ではありましたが、そうはいっても、やっぱりちょっと泣きすぎ…

劇場では、誰か他の人と空間を共有することによって生まれる緊張感の中でドキドキ、うるうるするのが正しい鑑賞方法だと悟りました。あれでは、何をしに行ったんだか全くわかんない。翌日の平土間鑑賞の時、そして、28日のバビ・ヤール@パリでは、同じ轍を踏むもんかと、ものすっごく気が張っていました。

そんな風に、一人で勝手にジェットコースター気分を味わっていたんですが、もみあげつけて、初老の軍人さんに変装して頑張っていたヴィノグラードフのグレーミンは、私にとっては、そりゃもう素敵でした。
だいたいグレーミン侯爵は、比較的誰が歌ってもそれなりに形が出来るし、バスの声の深さが際立つ味わい深いアリアなので、もうけ役の一つとでも言うか…間違いの少ない役ですし。

往々にしてあま〜〜〜くなりがちなアリアでもあるんですが、彼はそこまで自分の声に耽溺しない。今、初日の放送音源を聴き直してみると、
もう少し甘くデレッとしたところがあってもいいのかな…とも思います。その辺はもう少し、年を取らないといけないのかも(笑)

この演出では最後のオネーギンとタチヤーナの応酬のところで、グレーミン侯爵が不意に現れ、二人の会話を聞いてしまい、愕然とする…という役割を担っています。
ROHでのグレーミンは、ベテランのペーター・ローズ。海坊主のような風貌でオネーギンを圧倒した彼が、最後には泣き崩れる(とまで言うと言いすぎかな)役作り。

この場面、ROHでご覧になった方々には、すっごい不評で^^;
まあ…いい悪いは別にしても、とにかくこの演出では、グレーミン侯爵がここに「いる」ことは曲げようのない事実ですから、私としては、ヴィノグラードフもペーター・ローズのように、いくらなんでも泣くなんて、貴族の男性として、その振る舞いはどうなの?!と感じる振る舞いをするのかどうかが、鑑賞のポイントだったのです。

一回目(From Light-side box seat)の時は、この肝心の最終場面も、左過ぎて見えませんでしたから^^;;;;;
二回目はとにかく、それだけは意地でも確認しないと!と、気合い入りまくりでした。。。

で、出てきた彼を見て唖然。
前日(大泣きしながらも)一応もみあげのチェックはしていて、確かにつけてたはずなのに
この日はない!! しかも、髪の毛も前日はほぼ白髪にしていたのが、この日はうす〜く染める程度で、殆ど素頭に近い状態。

…あの。
これは、反則ですよ、は・ん・そ・く!!!!!!かっこ良すぎます(///▽///)

これじゃ退役軍人のはずはなく、オネーギンよりもちょっとだけ年長の、青年貴族じゃないか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
前日までは我慢したけど、やっぱり、もみあげは嫌だったの?^^;

とか、くだらないことが頭を駆け巡ったのですが、
「もしかしたら、この後速攻でパリに向かうの?」

ってことに、はっと気がつきました。
26日がトリノでの最終公演、28日がパリでの13番。27日の朝一番から、パリで打ち合わせやリハーサルをする為には、どうしても26日中にパリへ移動する必要があったのでしょう。この日は15:00からの開演でしたから、夕方には余裕で終わりましたし。
トリノの街から空港までは、そんなに距離もないから、急げば最終便に間に合わないことはないか。。。

とか、舞台を見ながらそんなことをうっすら、考えていたのでした。
そして終演。カーテンコールでいの一番に、一人出てきた彼を見て、その予感が的中したことを確信したのでした。お疲れ様…としか、いいようがないです、ホントに。

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それはともかく、退役軍人のはずが、青年貴族グレーミンと化してしまうとですね…
あの、最後の場面が、すっごく、説得力を持って迫ってきたんです。

初老の男性ならば、若い奥さんに裏切られて、情けなく涙する…というのもアリだと思わなくもないんですけど、
オネーギンとさほど年代が変わらないように見えるグレーミンが、一瞬うなだれたあと、
顔を上げて、出て行くオネーギンを見据えた時は「このまま一戦交えて、グレーミンがオネーギンを殺してしまうんじゃないかしら?!」というぐらいの殺気が漂い、
タチヤーナが「あなた、違うの…許して…」と言わんばかりに、グレーミンに駆け寄った後で、彼女に対して見せた疑いの表情は、涙を流すなんていう情けない姿ではなく、背筋がぞくっとするような、寒気さえ感じさせる、冷たいものでした。

あれでは、タチヤーナが泣き崩れても無理はない、彼女はオネーギンと一緒になれなかったことを嘆いているのではなく、今の大切な夫から突き放されたことに対する涙なんだわ…と、私には思えました。

これは狙ってこうなったわけじゃなくって、たまたま最終日の彼の事情がそうさせたんでしょうけど、これなら最初から、無理に老けメイクにしなくても、こうしておけばよかったんじゃないの?!
何がいい方に化けるか…って、ホントにわかんないです。舞台は水物、そのときそのときの一期一会なのですね。

(リハーサル&ゲネプロの映像が混じっているんですが、最後の場面のイメージはこういう感じ。ROHのと比較すると、同じ舞台でも演じる人によって、随分印象が変わるな・・・と思います)

(やっぱりというか、案の定すごく長くなったので別建てにしました・・・全体編は=>=>=>)
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Evgenij Onegin(Eugene Onegin)

Teatro Regio, Venerdì 17 Maggio 2013 – Domenica 26 Maggio 2013

Evgenij Onegin :baritono Vasilij Ladjuk, Vladislav Sulimskij (18, 23, 25)
Tat’jana, figlia di Larina :soprano Svetla Vassileva, Radostina Nikolaeva (18, 23, 25)

Vladimir Lenskij :tenore Maksim Aksënov, Aleksej Tatarintsev (18, 23, 25)
Ol’ga, figlia di Larina :contralto Nino Surguladze, Iryna Zhytynska (18, 23, 25)

Il principe Gremin :basso Aleksandr Vinogradov
La vedova Larina,possidente :mezzosoprano Marie McLaughlin
Triquet, un maestro di francese :tenore Carlo Bosi
La njanja Filipp’evna :mezzosoprano:Elena Sommer

Un Capitano della Guardia :basso Vladimir Jurlin, Marco Sportelli (18, 22, 24, 26)
Zareckij :basso Scott Johnson
Guillot mimo :Giuseppe Cannizzo, Andrea Frisano (18, 23, 25)
La giovane Tat’jana mimo :Francesca Raballo, Veronica Morello (18, 23, 25)
Il giovane Onegin mimo :Andrea Frisano, Giuseppe Cannizzo (18, 23, 25)

Direttore d’orchestra :Gianandrea Noseda
Regia :Kasper Holten
Scene Mia Stensgaard
Costumi Katrina Lindsay
Luci Wolfgang Göbbel
Coreografia Signe Fabricius
Video Leo Warner e Lawrence Watson
per 59 Production
Aiuto regista Justin Way
Costumi ripresi da Elena Cicorella
Luci riprese da John Charlton
Coreografia ripresa da Toniah Pedersen
Video ripresi da Benjamin Pierce
Maestro del coro
Claudio Fenoglio

Orchestra e coro del Teatro Regio

Nuovo allestimento in coproduzione con
Royal Opera House Covent Garden, Londra
e Opera Australia

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