101019 フィガロの結婚@新国立劇場 千秋楽

怒っても泣いても笑っても、これが最後。
これまで必ず同行者がいたのですが、最終日だけはひとりでじっくり、音楽と向き合いたい…と考えていたので、予めこの日だけは、誰ともお会いする予定を立てておりませんでした。

席は1F右サイド、中央寄り通路の隅っこで、かなり前の方だったんですが、幸いにも?隣も空席。誰にも遠慮しないで(笑)浸れるわ~~~と、私の方は「全て準備が整った」状態で、開演を待ちました。

この位置だと、指揮者の顔、振り方もよく見えます。長身ハンサムのミヒャエル・ギュッドラー氏、今夜こそしっかり?!振ってよね~~~と、祈るような気持ち。

「フィガロ」の魅力は、なんと言っても生命力溢れる音楽の躍動感でしょう。聴いた翌日まで、頭の中にその音楽が残って、ルンルンするような感じ。
それが感じられれば、実演では音楽が先走ったり、多少精度が荒くなるのは構わない…と私は思います。
ズレても、プラスに転じるズレならば気にはならない、失敗を恐れておっかなびっくりで「守り」に入った演奏よりも、思いっきりの良さが欲しい。だって、レコードを聴きに来ているわけではないですからね。

毎回序曲から、心拍数がガンガン上がって、ワクワクを通り越してハラハラし通しだった今までの演奏と違い、この夜は、確かにオケに勢いを感じました。うん、いいかも…

さてフィガロの第一声。

これを聴いて「よ~~~~~~~っし!」と感じました。今日は行ける、今までスザンナにリードされっぱなしだったけど、今夜は僕が引っ張る、主役は僕だ、という気合いが表情にもよく出てました。そう来なくちゃ。

うまく言えないんですけど、調子が良いときの彼は、弾むような、小気味よい独特のリズムの取り方をします。これが今まで感じられなくて、フラストレーションを感じてたんですけど、この夜の彼の歌には、それ+勢い、そして確信がありました。その「弾み」が感じられると、すごく彼がリラックスして、楽しそうに歌っているな…と、私は感じます。これが私の一番好きな彼!私、それを聴くのが大好きなんです。

フィガロとスザンナの最初の出番が終わり、マルチェリーナとバルトロが出て来る前、後ろの席のおじさん達が「今回のフィガロ、なかなかいいじゃない?」とお喋りしているのが聞えました。よ~~~~~~っしゃ!

4回目にして初めて気がつきましたが、この演出、フィガロが舞台右側で歌うことがけっこう多いんですね。双眼鏡いらずの至近距離(でも使っちゃったけど)で、小芝居や表情もばっちり見えて、クスクス笑いをこらえるのに必死の私。
なんか、マジメにやっているのが、逆に笑えるというか。。。

…あれ?そういえば私、今回全然こういう風に笑ってなかったっけ…

それにクスクス笑っているのは、私だけじゃない。全体的に観客の反応も良かったと思います。

どこがどう変わった?のか、うまく説明できませんが、ハラハラドキドキではなくって、とにかく心地良い高揚感と、躍動感!気持ちよく音楽と舞台に没入して、余計な感傷が入る隙が全くありません。
そう!フィガロは喜劇なんだから、こうでなくっちゃ。

なんか、すごく爽快で気持ちいい…アンサンブルもばっちり揃って、勢いがあります。

伯爵のレガッツォも、この夜はいやらしさ復活(笑)
まさに千秋楽マジックが働いたのか?!演奏に「吹っ切れた感」が感じられ、気持ちよく最後を締めくくることができそう…

とにかく、前回とはまるっきり別物。白い壁面が、まるでベルリン国立歌劇場の白い大理石の柱の色にオーバーラップし、自分が今、東京ではなく、リンデンで聴いているような錯覚さえ覚えました。

そう、そう。リンデンの出し物だって、いつだって「オペラ史に燦然と輝く名演」ばかりじゃない。ビッグネームの歌手が出てなくても、若い歌手が勢いよく、息の合った小気味よい演奏を聞かせてくれれば、それが心地良い。
取り澄ました借り物のような音楽じゃなくって、多少傷があっても、それを恐れない、そういう勢いがあれば、自ずと魂にも響いてくるわけで…

この夜はまさに、そういう感じがしました。そう。こういうのをずっと、聴きたかったんです。

音楽がふわ~~~っと広がると、自信に溢れた彼の声も、劇場いっぱいに広がる。
頭はいい(声が深いからそう聞こえる^^)んだけど、ちょっとお間抜け(大げさな演技はしないけど、よく見てると小芝居が上手いのヨ)、少し怒りっぽくって(相性のいい新国の音響効果をよ~く利用して、苛立ったところの表現、ビクっとしたわ)でも誠実で優しいのよ(ふとした時の表情がね、すごくいいのヨ)

確かに、強烈な個性溢れるフィガロではないんだけど、じゃあどういうフィガロならいいのよ?って聞かれると、やっぱり私には、こういう彼のフィガロが一番なわけで。

それを最終日に、自分で確認できたこと…彼に"You are my ONLY Figaro!!!"と、心をこめて(笑)言ってあげられたことが、嬉しかった。3回目は30点(!)と、キツイことを言いましたが、お疲れ様の意味も込めて、200点あげます[E:heart04](甘っ・笑)

泣いたり怒ったりしたのは、それだけ私が彼のこの役に対して思い入れが深かったからでもありますから、やはり日本で4回聴けたこと、歌ってくれたことには感謝してます。
だからこそ、最後は変な感傷よりも爽快な気分が勝って、笑うことができたのは、やはり感慨深いです。

恐らくベルリン国立歌劇場の専属時代に歌い始めているので、レパートリーの年数としては比較的長いと思います。かれこれ7~8年かな?私がファンになる前から歌っている、今では数少ない役の一つです。

…の割に、実はリンデン以外で歌ったことがないというか、一度だけ2004年の夏に、シカゴのラヴィニア音楽祭で、バレンボイムの指揮で歌ったのが、おヨソで歌った唯一の公演だと思いますが、実質的にはリンデン以外で歌うのは、今回の新国が初めて。
しかもリンデンでも、今年の2月に2回歌ったのが3年ぶり(それも、一週間前に急に決まったんだった^^;)だったので、この時に「いい意味でリフレッシュできた」と言っていたのですけどね。

(尤も、今や彼が一番たくさん歌っている(笑)エスカミーリョも、3年前に新国で歌った時には、やはりリンデン以外で歌ったことがなく、よく歌うようになったのは、その後からですから…
そしてフィガロが終わった翌日の朝、すっ飛んでミラノ ⇒ 29日から「カルメン」^^;)

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

泣いたり怒ったり笑ったり…で大忙しの10日間。仕事と初台通いをほぼ2日ごとに繰り返すのは、さすがに疲れました。私は何故か、彼の公演期間に風邪をひくことが多く、今回もまた風邪っぴきでしたし^^;
この10日間、食欲は普段の半分ぐらい、睡眠時間も4,5時間で、せっかく美を磨いていたにもかかわらず(笑)肝心の時にはヨレヨレだったかも…^^;

最終日は夜公演だったので、贅沢して宿泊しましたが、たった一泊しかしてないのに、帰宅した後はまるで、一年に一度の追っかけ遠征旅行から帰って来た時と同等の疲労感。
自分が海外に追っかけて行っている時と違って、色んな方とお会いし、リアルタイムで色んな方の感想が上がる…という、私が受ける情報量の違いにも、戸惑いましたが。

劇場へ来て下さった&お会いした方々、声をかけて下さった方々には本当に感謝してます。
「ヴァラリンさんが応援してるヴィノグラードフが歌うから」という理由で、遠くからわざわざ来て下さった方々もいらっしゃいましたし、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

あと一つ報告しないといけないこと…私と直接お会いした方数名にもご協力頂いたのですが、千秋楽の後、彼に心ばかりのプレゼントを渡しました。(喜んでくれてた…と思いますヨ^^)
そのご報告は後日。今は本当に疲れていて、そのこと自体を考えるのがしんどい。もう少しお待ち頂ければ…と思います。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

フィガロの結婚@新国立劇場 4回目(千秋楽)
2010/10/19 1階右サイド前方にて鑑賞

【指 揮】ミヒャエル・ギュットラー
【演 出】アンドレアス・ホモキ
【美 術】フランク・フィリップ・シュレスマン
【衣 裳】メヒトヒルト・ザイペル
【照 明】フランク・エヴァン

【アルマヴィーヴァ伯爵】 ロレンツォ・レガッツォ
【伯爵夫人】ミルト・パパタナシュ

【フィガロ】アレクサンダー・ヴィノグラードフ♥ 聴いて下さって、ありがとう(^^♪
【スザンナ】エレナ・ゴルシュノヴァ
【ケルビーノ】ミヒャエラ・ゼーリンガー
【マルチェッリーナ】森山京子
【バルトロ】佐藤泰弘
【バジリオ】大野光彦
【ドン・クルツィオ】加茂下 稔
【アントーニオ】志村文彦
【バルバリーナ】九嶋香奈枝

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

Translate »
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。