R・シュトラウス:ナクソス島のアリアドネ@パリ2003 音だけ編

(過去の蔵出し鑑賞記を随時アップします・・)

■ ■ ■ データ

指揮:Pinchas Steinberg
2003年12月5日 パリ・ガルニエライブ
メディア:ネット放送録音(CD)

■ ■ ■ 配役

プリマドンナ/アリアドネ:カタリーナ・ダライマン
作曲家:ソフィー・コッホ
ツェルビネッタ:ナタリー・デッセィ
テノール歌手/バッカス:ジョン・ヴィラーズ
音楽教師:デビット・ウィルソンージョンソン
舞踏教師:グレアム・クラーク
ハルレキン:Stephane Degout
執事長:ヴァルデマール・クメント
スカラムッチョ:ダニエル・ノーマン
トゥルファルディン:アレクサンダー・ヴィノグラードフ
ブリゲッラ:ノルベルト・エルンスト
水の精ナヤーデ:Henriette Bonde-Hansen
木の精ドリアーデ:Svetlana Lifar
山彦エコー:Sine Bungaard

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シュトラウスのいわゆる「洒落系」(バラの騎士やアラベラ)のオペラは大好き。

この作品も、ずっと気になっていながら、どこかつかめない…思っていたところに、嬉しい知らせが。

パリでの上演は、ネットで放送されているようなので、きっと放送録音が存在するだろうと思っていたら、案の定見つかりました。これこそ恐らく、駆け出しの頃にしかやらないような小さな役ですが、初めての《有名どころオペラ》全曲録音ということで、嬉しくて嬉しくて、もう浴びるように何度も何度も聴いてます。

とはいえ、この道化4人組のアンサンブルのなかでは、音だけで聞分けるのは至難の業です。とりわけこの作品の、この道化たちは器楽的なアンサンブルとしての価値が高いわけで、その中の一人の声を取り出して聴く…なんていうのは、本筋ではありませんから。一人が飛びぬけて聴こえてきたら、あんまり良くない…というか、みんなの声が溶け合って、ハーモニーを作るという役割だと思ってます…

2,3箇所ソロで歌うフレーズがありますが、最初に聴いた時に1箇所だけは、間違いなく、彼の声だとはっきりわかりました。
最初のうちはテノールに耳が向いていたのですが、繰り返して聴いていると、アンサンブルの中でも、ああやっぱり低声は彼の声だと、はっきり認識できるようになりました。最低音部分はちょっと歌いにくそうかしら?

贔屓目だと思いますが、ノーブルな美声で、アンサンブルの中でも決して出すぎず、乱さない!という点は立派なものだと思いますし、本当に楽しそうに歌っているのが想像できます。こういった小さな役でも、表現力は充分に推し量れると思います。今まで聴いたこと、見たことのある映像での道化たちと比べて、彼を含めて、全体的に若々しいですし、どの歌手も強い個性がある!というわけではないですが、それだけにアンサンブルとしてよくまとまっていると思います。

「ここはアンサンブルのはずなんだけど…」と、ぼんやりと思っていたのに、今まで見た、聴いたソフトではそれぞれの歌手の個性が強すぎて、今ひとつ面白さがわかりませんでした。単純ですが、この録音を聴いて初めてこの部分が、単なる劇中劇のスパイスとしてだけではなく、音楽的にも大変魅力的な、アンサンブルとしての面白さがはっきりと認識できた気がします。今まで頭の中で「無理やり」こじつけて思い込んでいたものが、やっと形になって現れたのかもしれません。

そして、僅かですが彼がソロで歌うフレーズの細やかな表現には、やぱり強く惹かれました。この録音を入手したあとで他の録音・録画でも繰り返しこの部分を聴いてますけど、やっぱり彼の歌い方が一番私にはしっくりきました。
それはともかく、シュトラウスの旋律をいかにもフランスのオケらしい柔らかな感じでまとめた、全体的にも大変美しい演奏だと思います。弦楽器も美しいのですが、とりわけ管楽器の美しさといったら!このオペラ、こんなに魅力的だったかしら?と、心から思いました。

デッセィのツェルビネッタは、声だけ聴いても充分に引き込まれます。あの超絶技巧を駆使した、オペラ史上屈指の難曲?「偉大なる王女様」のアリアを、技巧だけではなく細かいニュアンスまでちゃんと表現しているのには、脱帽です。女らしさが十二分に感じられ、道化達との絡みも本当に楽しそう。舞台写真で見る限り、演出は一癖ありそうですが、美しい舞台姿と相まって、さぞ素晴らしいツェルビネッタだと想像できます。

ダライマンのアリアドネは、こもり気味の声で、もう少し明るい声の方が好みですが、歌い回しは悪くないと思います。近年この役で引っ張りだこのヴィラーズのバッカスは、力任せな感じ…もう少し柔らかく歌ってくれたらなぁ…と思います。「若々しい、美しい神」のイメージを崩さないようなバッカスが好みなのですが…

それでもやっぱりバッカスのパートは魅力的です。何回も聴いていたら、この旋律はやっぱりいい!って思えますもの。こういうのを聴いていると、もしかしたら私の一番好きな作曲家は、シュトラウスかも…と思ったり…

最終部の2重唱は、シュトラウスのオペラでは数少ないソプラノとテノールの2重唱です。バッカスが歌い上げるところは、その旋律を聴いているだけでも胸いっぱいになります…

以前からフランスのテレビでは、繰り返し再放送があるという噂を耳にしていたので、なんとかしてその映像を見たいと思っていたら、念願かなって観る事ができました。★こちら

このプロダクションは2004年にも上演されていますが、指揮者とキャストの一部が違います。そちらのラジオ放送録音も縁あって聴くことが出来たのですが、個人的にあまり好きではない指揮者ということもあって、間の取りかたなどが好みではなく、今ひとつだったかな、というのが正直な感想。彼も2003年の方が、のびのびと歌っているような気もしましたが、最初に聴いたのがこちらで、浴びるほど聴いているので、その刷り込みもあるのかも。

何はともあれ、どんな小さな役でも、好きな人が歌っていると言うだけで、作品に対する糸口がつかめるのは嬉しいことです。これでやっと、この作品が「大好き!」と言えるようになりました。

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