ショスタコーヴィチ交響曲13番:全5楽章日本語訳

ロシア語-日本語対訳は以下をご参照下さい。
Russian-Japanese translate pages are below.
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第一楽章(No.1)   ・第二楽章(No.2)   ・第三楽章(No.3)   ・第四楽章(No.4)   ・第五楽章(No.5)

第一楽章.バビ・ヤール

【合唱】
バビ・ヤールの上に記念碑はない。
険しい断崖が、粗末な墓碑銘のようなものだ。
僕は恐ろしい。
僕は今日、自分がユダヤ民族そのものであるかのように
年を取ったように感じるのだ

【独唱】
僕は今、自分がユダヤ教徒であると感じている。
ほら、僕は、ゆっくり、のろのろと古代エジプトを歩き回っている。
ほら、僕は、十字架に張り付けられ、非業の最期を遂げるのだ、
そして今でも僕には、釘の跡が残っている

僕は、自分がまるでドレフュスであるかのように感じている。
あれは僕だ。

名誉や利益にとらわれてばかりいるつまらない奴らが
僕の密告者であり、裁き手であるのだ。
僕は柵の中
僕は鉄格子の中にいる
苦しめられ
唾を吐きかけられ
罵られて。
そして、ブリュッセル製のフリルを身につけた若いご婦人がたが
金切り声をあげながら、傘で僕の顔をつつく。

僕は、ベラストクの中にいる少年である、
と感じている。

【合唱】
血が流れ、床の上に広がり、にじむ。
お偉い方がたが、安い酒場のカウンターで暴れ、
ウォッカと玉ねぎが半分ずつ混じって、におう。

【独唱】
僕は、長靴で蹴飛ばされ、無力である。
ポグロムの加担者らに、僕はむなしく懇願する。

【合唱】
「ユダヤ人を殺せ、ロシアを救え!」
高笑いの中、穀物屋の旦那が僕の母さんを強姦する。

【独唱】
おお、僕の民族、ロシア国民よ!
僕は知っている- お前は元来、国際的なのだ

しかし、汚い手をした奴らが、お前のまさに清らかな名を唱えて
がちゃがちゃいわせたのだ

僕は、お前の大地の素晴らしさを知っている。
だが、何と卑劣なことだ
細い血管を震えさせることもなく(臆面もなく)
反ユダヤ主義たちは声高らかに自分自身を

【独唱と合唱】
「ロシア民族同盟!」と称する

【独唱】
僕は自分が、アンネ・フランクであると感じている。
透き通っていて
まるで4月の小枝のような。
そして、僕は愛している。
そして僕に、内容の乏しい言葉はいらない。

僕たちに必要なのは、
お互いに見つめ合うこと。
なんとほんの僅かしか、見たり嗅いだりできないのだろう

僕たちは木々の葉を見ることもできないし
天を仰ぎみることもできない。

しかし、とてもたくさんできることもある-
それは、暗い部屋の中でお互いに
抱きあい、優しくし合うこと。

【合唱】
(何が)こちらへ来るの?

【独唱】
怖がらなくてもいいよ…あれは、春そのものの唸り声。
春が近づいているんだ。
僕の方へ来て。
すぐに僕にくちづけを…

【合唱】
(彼らは)ドアを壊しているの?

【独唱】
違う - あれは、流氷の音だよ…

【合唱】
バビ・ヤールの上で野生の草が
かさこそと音を立てている。
木々はまるで、裁判官風に、いかめしく見ている。

ここでは、すべてが無言の内に叫び
そして、帽子を脱いだ僕は、
ゆっくりと白髪になっていくのを感じている。

【独唱】
そして僕自身は
まじりけない無言の叫びであるかのように
数百万の虐殺された人々の上にいる
僕は-
ここで銃殺されてしまった老人であると感じている。
僕は-
ここで銃殺されてしまった赤子であると感じている。

僕の内のどんなものも
このことを忘れはしない!

【合唱】
“インターナショナル”を響かせろ

地球上最後の反ユダヤ主義者が
永遠に葬られる時に。

【独唱】
僕の中にユダヤの血は流れていないが
頑迷な憎悪によって、憎まれる。
僕は全ての反ユダヤ主義者たちに
ユダヤ人として

【独唱と合唱】
そして、だからこそ僕は-
真のロシア人であるのだ!

第二楽章.ユーモア

【独唱】
皇帝、王様、大帝
全地球上の支配者たちは
閲兵式の指揮を取ることはできたが、
ユーモアだけは指揮することができなかった
(思うようにあやつれなかった)

日がな一日横になり世話を受けている
名門のお偉い方々がいる宮殿に
放浪者であるイソップが姿を現すと、
お偉い方々の方がこじきであるかのように見えた。

【合唱】
放浪者であるイソップが姿を現すと、
お偉い方々の方がこじきであるかのように見えた。

【独唱】
偽善者が、自分たちのひ弱な足で
汚れた足跡をつけてしまった、その邸宅の中で
高官ホージシャ・ナスレヂンはあらゆる俗悪さを
まるでチェスをするかのように、
冗談で片付けてしまった…

【合唱】
高官ホージシャ・ナスレヂンはあらゆる俗悪さを
まるでチェスをするかのように、
冗談で片付けてしまった…

【独唱】
彼らはユーモアを買ってしまいたいと思った。

【合唱】
だかしかし、ユーモアを買うことは出来ない。

【独唱】
彼らはユーモアを殺してしまいたいと思った。

【合唱】
だがしかし、ユーモアは嘲笑するように、
こぶしを振り上げて見せた。

【独唱】
ユーモアを相手に戦うことは難しい。
ユーモアは際限なく処刑されていった

【合唱】
切り離されたユーモアの頭が、
射手の槍の上に突き刺さった。

【独唱】
しかし、道化者の笛が
物語を始めようとすると

ユーモアは良く響く声で叫んだ。「ぼくはここだよ!」

【合唱】
「ぼくはここだよ!」
【独唱と合唱】
そして勢いよく踊りだした。

【独唱】
政治的な罪を犯して捕まえられたユーモアは、
ぼろぼろで裾の短い外套をまとい
うなだれて、まるで後悔しているかの如く
死刑場へと歩いていった

見た目はまったく、従順なように見え、
天国で暮らす(死ぬ)覚悟が出来ているかのように見えた
ところが、急に外套からそっと抜け出して

【独唱と合唱】
「もういいよ~!」と片手を打ち振るった

【独唱】
彼らはユーモアはを特別にあつらえた部屋の中に隠したが、
事はうまく運ばなかった。

【独唱と合唱】
ユーモアは柵や石垣を、
楽々と通り抜けた。
風邪をひいて咳をしつつ
ユーモアは二等兵として
鼻歌交じりに歩いていった
ライフル銃を持って、冬宮へと。

【独唱】
彼はすっかり、陰気なまなざしにも慣れてしまった。
だが、このことは彼にとって、なんの害にもならなかった。
そしてユーモアは、自分自身をも
ユーモアをもって、時折見つめるのだ
彼は不滅だ・・・

【合唱】
不滅だ!

【独唱】
彼は器用だ・・・

【合唱】
器用だ!

【独唱】
そしてすばしっこい・・・

【合唱】
すばしっこい!

【独唱】
あらゆるものを通り抜け、あらゆる人を超えて、
すぅっと通り抜けて行く。

【独唱と合唱】
ユーモアに栄光あれ!
彼は勇敢な、人間なのだ。

第3楽章.商店にて

【独唱】
ある者は大きなスカーフを、ある者は小さなスカーフを巻いて、
偉業を為すかの如くに、労働へ赴く如くに
ひとりずつ、女性たちがもの一つ言わずに
黙って商店の中へ、歩いて入って行く。

【合唱】
おお、彼女らの持っている空き缶のがちゃがちゃ鳴る音、
空き瓶や鍋の響き!

たまねぎやピクルスのにおいがする。
“カブール”ソースのにおいがする。

【独唱】
凍えながら、レジへの行列に長いことじっと立つが、
レジの方へ近づいていく間に
女たちからの呼吸で店の中はいっぱいになり、
すっかり、熱を帯びて暖かくなる。

彼女たちは静かに待つ。
家庭の善良な女神たち
そして両手にお金をぎゅっと握りしめている
自分の労働で得たお金を。

【合唱】
これがロシアの女たちだ。
これが我々の誇りであり、そして裁き手であるのだ。
彼女たちはコンクリートをこねもし、
田畑を耕しもし、収穫をしもした…。
彼女たちは全てを耐えてきた、
彼女たちはすべてを耐えていく

【独唱】
この世のすべてを彼女たちはこなすことができる
どれだけの力が彼女たちに与えられているのだろう!

【独唱と合唱】
彼女たちに対して勘定をごまかすのは、恥ずべきことだ!
彼女たちに対して目方をごまかすなんて、とんでもないことだ!

【独唱】
そしてポケットの中にぺリメニを一つ突っ込んだ後で
僕は厳しく静かに見つめる、
袋を持ちくたびれている、
彼女たちの正義の手を。

第4楽章.恐怖

【合唱】
ロシアにおいて、恐怖が消滅しようとしている
まるで昔の歳月の幻影でもあるかのように
ただ、教会の入り口で、
あちこちで、もっとパンをくれ、と頼む老婆たちのように。

【独唱】
勝ち誇った欺瞞に満ちた宮殿の中で、
権力と力の内にあった恐怖を、僕は覚えている。
恐怖はまるで影のように、いたるところに入り込み、
どの階段にも侵入していった。

(恐怖は)人々をこっそりとおとなしくさせ
すべてに刻印を押していった
本来なら黙っているべきところで大声をあげるように
本来なら大声をあげるべきところで黙っているように、馴らしたのだ。

あれは今では、遠い昔のこととなった。
今となっては、思い出すのはおかしなことだ。
誰かからの密告に対する、ひそかな恐怖、
ドアをノックする音に対する、ひそかな恐怖。

では、外国人と話す恐怖はどう?
外国人と…いや、それよりも妻と話すことは?
葬送行進曲の後、静けさと自分と、
二人ぼっちで取り残された時の本能的な恐怖といったら?!

【合唱】
僕たちは吹雪の中での建設作業を、
弾丸の下での突撃を恐れなかったが、
しかし、自分自身との対話を
時には極度に恐れたのだ
僕たちは狂わされもしなかったし、堕落もさせられなかった、
しかし今は、わけがあって、敵との戦いにも勝ったところの
ロシアの恐怖は、もっと、より大きな恐怖として広がっている。

【独唱】
新たな恐怖が輝きを放ちつつあるように、僕には見える:
国に対する不誠実な恐怖。
真実である思想を
虚偽でけなす恐怖。
頭がぼんやりするまでファンファーレを吹く恐怖。
他人の言葉をくり返す恐怖。
疑惑でもって他人をけなし、
自分自身を過度に信用する恐怖。

【合唱】
ロシアにおいて、恐怖は消え行こうとしている。

【独唱】
そして、僕がこれらの恐怖について書く時、
時として、知らず知らずのうちに急いでいる、
というのも、極限の力を出して書かない、という
たった一つの恐怖から書いているのだから。

第五楽章.出世

【独唱】
司祭たちは同じことを何度も言った。
ガリレオは(人々にとって)有害であり、愚か者であると。

【合唱】
(ガリレオは愚か者であると・・・)

【独唱】
しかし、時間の経過が明らかにしているように、
愚かなことは、賢いことである!

【合唱】
(愚かなことは、賢いことである!)
(愚かなことは、賢いことである!)

【独唱】
ガリレオと同時代の学者は、
彼はガリレオよりもばかではなかった。

【合唱】
(ガリレオよりもばかではなかった・・・)
(ガリレオよりもばかではなかった・・・)

【独唱】
彼は地球が回ることを知っていた。
しかし、彼には家族がいた。

【合唱】
(しかし、彼には家族がいた・・・)
(しかし、彼には家族がいた・・・)

【独唱】
そして彼は、自分自身への裏切り行為をした後で
妻と箱馬車に座り、
これこそが出世、とみなしていたが、
ところが実際には、彼は出世を台無しにした。

【合唱】
(ところが実際には、彼は出世を台無しにした。)
(ところが実際には、彼は出世を台無しにした。)

【独唱】
惑星の認識のために
ガリレオは一人で危険を冒した。
そして彼は、偉大になったのだ。

【合唱】
(そして彼は偉大になったのだ)

【独唱】
ほら、これがすなわち、

【独唱と合唱】
出世主義者であると、僕はみなしているのだ。

【合唱】
かくて、出世万歳!
その出世とは、
シェークスピアやパスツール、
ニュートンやトルストイ、
トルストイが行ったようなものだ

【独唱】
レフ(トルストイ)のことか?

【合唱】
そうだ、レフのことだ!
何のために彼らは汚名を被せられたのか?
どれだけ非難されようと、才能は才能なのだ

【独唱】
(彼らを)罵倒した人々は忘れられる。

【合唱】
しかし、罵倒された者は忘れられることはない。
(しかし、罵倒された者は忘れられることはない。)

【独唱】
成層圏へ達しようと熱望した全ての人々、
コレラが原因で死んだ医者たち
ほら、この人々は出世をなし遂げたのだ!

【独唱と合唱】
僕は彼らの出世を手本としよう

【独唱】

僕は彼らの神聖な信念を信じる。
彼らの信念は、僕の勇気となる。
僕は出世をしないことで
僕自身の出世をすることと、するのだ!

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