110606-23 Roméo et Juliette(Frere Laurent)@ Teatro alla Scala

(Live-impression:2011.June 11 & 13 @ Teatro alla Scala, Milan)

Direzione
Romeo et Juliette
Charles Gounod

Direttore Yannick Ne’zet-Se’guin
Maestro del coro Bruno Casoni
Regia Bartlett Sher
Scene Michael Yeargan
Costumi Catherine Zuber
Luci Jennifer Tipton
Maestro d’armi B.H. Barry

Cast

Juliette Nino Machaidze (June.11 Maria Alejandres)
Romeo Vittorio Grigolo (June.11 Fernando Portari)
Frere Laurent Alexander Vinogradov
Mercutio Russell Braun
Stephano Cora Burggraaf
Le Comte Capulet Franck Ferrari
Tybalt Juan Francisco Gatell
Gertrude Susanne Resmark
Le Comte Paris Olivier Lallouette
Gre’gorio Ronan Ne’de’lec
Benvolio Jaeheui Kwon
Le Duc  Simon Lim

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それはやっぱり、わたしにとって、キラキラ輝く宝石のような時間。

Weblog110708a_2

(お待たせしました?! 超!!!長文+激甘シロップ、胸焼け必至、暑い夜の暑苦しい文章に耐えられる勇気のある方はどうぞ^^;)

この作品におけるローラン修道士の役割は

「ロメオとジュリエットの結婚式を挙げて、窮地に陥ったジュリエットに仮死状態になる為のお薬をあげた人」です。

戯曲ではもう少し・・追放されたロミオの相談に乗ってあげたりなどの出番もありますが、こと、グノーのオペラでの役割は本当に「それだけ」。

上演形態によっては、ジュリエットが仮死状態になった後、ロメオへの手紙をメッセンジャーに託したけど、その人が殺されて届かなかった、まずい!!と、彼のお弟子さんと焦る場面もあるのですが(プラッソン盤のCDには含まれてます)残念ながら今回のスカラ座(そしてオリジナルのザルツブルグでの映像も)では、その部分はカットされてました。

歌の部分はまあ、「カルメン」におけるエスカミーリョと同じぐらい…トータルで20分あるかないか?なんですけど、舞台を通して観ると、歌わなくても舞台での出番はけっこう、あることに気が付きました。

特に後半は、ロメオとジュリエットの初夜の場面が終わって(=ロメオが退場した後)
キャピュレット伯爵がパリスとの結婚を決めたから…と入ってくるところから、伯爵と一緒に入って来ますし、その後のジュリエットにお薬をあげるシーン → 毒薬のアリアの場面で一旦退場したのち、ジュリエットとパリスとの結婚式~彼女の薬が効いて、倒れるところまで…という感じで、それなりに出番が多いのです。

そんなローラン修道士を演じたわがゴヒイキさん、アレクサンダー・ヴィノグラードフ
この演出では、美しい前奏曲に合わせて、茶色の僧衣+小さなお帽子を頭にのっけて、かごの中に白いユリの花を入れてゆっくり歩いて登場します。

ザルツブルグの映像のペトレンコは、地毛で(少し後退気味ですが…^^;)役作りも若いまんまというか、いかにも手際の良さそうな修道士さんですが、
ヴィノグラドフは地毛を白髪交じりに染めていて、おじいさんというほどではないけれど、初老のイメージ。人の良さそうな、落ち着いた役作りでした。

彼は本当に、こういう僧衣がよく似合うし、雰囲気が本当にピッタリ。

それにしても、清貧でストイックな庵室を描くイメージの、弦楽器の伴奏の美しさと言ったら!俗な言い方ですが、心が洗われるような、ほっとするような…穏やかで優しい旋律です。
これに匹敵するのは《ボリス・ゴドゥノフ》のピーメンの庵室の場面かなぁ。。。と思ってみたり。

で、その美しい前奏曲に合わせて、にこやかに笑みを浮かべながら、ユリの花をいとおしそ~~~に後ろの荷車?の上に並べるローラン修道士…にうっとり…

…と行きたかったのですが、全編通して、非常にダイナミックで引き締まった指揮に好感が持てたネゼ=セギャンですが、実は映像で聴いた時から
「お願い、ここもう少し、ゆったりと間を持たせてくれない?^^?」と感じて、少し不満だったんですが、それはスカラ座ででもやはり同じ…で、ホントに、ここだけが唯一の不満点。

最初に4つ「ポーン、ポーン、ポーン、ポーン」と(何の楽器なんでしょ?)入りますが、この一つ一つの間が(ほんの数秒のことなんでしょうけど)ちょっと、私には早いんです(^^;

2回目の時は、とにかくグリゴーロ@ロメオの声の大きさと演技の熱さに度肝を抜かれていた為(^^; 4重唱では

「…ま、負けないで~~」

と、心の中でハラハラ。もっちろん、そんな心配は杞憂で、ちゃんと彼の低音はすーっと、伸びて聞こえましたヨ。

Weblog110708b_2この場面、舞台写真でも主役カップルのいちゃつきぶりwに
「こら!いい加減にしなさい!!!」と呆れ、困惑気味の困り顔(*vvが見られますが、

(別の日のものですが)YTに隠し撮りが上がってますので、ご紹介しておきます。(いつまで観られるかは??)

…はい、この手の演技に滅法弱いワタシ。萌え萌えでございました(*vv

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後半の毒薬に絡む場面。

映像のペトレンコと、スカラ座のヴィノグラドフ。
二人の役作りは、特に後半部分のジュリエットとの絡みに於いて、全く対照的。
それによってジュリエットの性格すら変わったように感じました。
二つの
上演で、全編中で最も異なった部分だったと思います。

上述したように、ロメオとジュリエットの初夜の場面が終わって(=ロメオが退場した後)キャピュレット伯爵がパリスとの結婚を決めたから…と入ってくるところから、ローラン修道士は伯爵と一緒に入って来ます。

ここで、伯爵にしぶしぶ従うように、結婚の準備として、なにか書類みたいなものを、ジュリエットのベッド脇のテーブルに並べるんですが、ここでキャピュレット伯爵が、いかにも娘思いを装いつつ、実はすごい自己中心的というか、自分の名誉しか考えてないエゴイストっぷりを発揮します。

(私、こーいう中年オヤジは本当に大っきらい!!全体編にも書きましたが、特にこの演出で観ていると、どうしてもジュリエット陣営の男どもに対しては、全く感情移入できない、いけすかないヤツばっかりだわ!!と思うんですが、その頂点にいるのが、このオヤジ・・;)

ここの場面で、映像のペトレンコは伯爵が歌っている間、どちらかと言うと、お父さんの言葉に対して、ジュリエットがどう反応するかを観察するような眼差しで凝視しているんですが

ヴィノグラドフがこの間にじっと見つめていた相手は、伯爵その人。

伯爵が「お前の結婚相手はパリスだ」(←意訳)と言ったところで、それまでは「困ったな…」というような表情だったのが、さっと目つきが変わって

「…何言ってんだ、コイツ…
お前、自分の体面が保てれば、それでいいのか?娘が可愛くないのか?!冗談じゃない、何とか私がロメオとジュリエットを助けてやらないと!」

…私の独断の色眼鏡(笑)で観ていたから、本当のところは彼がどういう思いでこのシーンを演じていたのか、わからないんですけど、私にはそう見えたし、感じた。

そしてここでジュリエットが「Dieu!(どうしよう!)」とつぶやいた後のローラン神父の「Silence!(何も云わずに!)」という低い声…

彼の、こういう何気ないワンフレーズが、すごく耳に残ることがあるんですが、今回はまさにこの「Silence!」が、そうでした。今も書きながら、まだ頭の中でこだましているような感じ。

で、彼がいつ毒薬を手にするのか、常日頃からそういうモノを隠し持っていたのか(^^;謎だったんですが(映像ではしっかり写ってないのよね^^;)

伯爵が自ら考案したウェディングプラン(笑)に酔いしれて、いい気になって(←思い入れがないと、辛辣・・;)歌っているあいだに、
お弟子さんの一人が、彼にそっと毒薬を持ってきて
「よし、これを使ってみよう」的に、うなずきながら受け取って、僧衣のポケット(ちゃんとあるのよ!^^!)にこっそりと忍ばせてました。

ふっふっふ。こーいう小芝居をちゃんと見る為にはやっぱり、実演で自分の観たいところを凝視しないと、映像や音だけではわかんないもんねっ。

ところで「神に仕える人が、どうしてそーいう、まやかしちっくな《毒薬》なんて持っているのよ^^;」と疑問に思ってたんですが、ちくま文庫の松岡和子訳「ロミオとジュリエット」の解説に面白いことが書いてありますので、一部引用してみます。

《そもそもロレンス修道士その人がパラケルス主義の「自然哲学者」、あるいは人によっては「魔術師」と呼んでいたであろう人物である。ジュリエットを仮死状態にしておく摩訶不思議な秘薬も明らかに彼自身薬草を調合して作り上げたものであろう》

だそうです。この辺りのことを追求するのも面白そうですが、ここではとりあえず、戯曲のロレンス修道士には、そういう背景があるよ…ということを示すに留めておきます。

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そして。音楽が激しくなり、嘆くジュリエットと二人きり。

映像でのペトレンコは、ここでかなり荒々しさを発揮するというか、ジュリエットに対して、かなり高圧的。

ジュリエットの腕をぐいっと引っ張ってみたり、薬に興味を示したジュリエットの腕を掴んでわざと乱暴に振り放したり。

そんなローラン修道士の態度に、ジュリエットも半分ヤケ気味というか、反抗的に見えました。

この箇所を、ヴィノグラドフがどう演じるか?ペトレンコと同じように、少し乱暴にふるまうのかが、私の一つの鑑賞ポイントでもありました。

彼は、手荒なことは一切しませんでした。仮死状態になるんだよ…ということを歌っている時に双眼鏡で覗いたら、白目剥いててコワさ倍増^^;
迫力出していましたけど

「これはこういう薬。でも、飲むか飲まないかは君の意思に任せるよ」

という感じで、ジュリエットの気持ちをあくまでも尊重する…というアプローチだったと思います。

退場する時も、仏頂面ではなくって(^^; 微笑んでたのが印象的…というか、彼らしいな、と。

その結果、ジュリエットの方も、映像で見せたような反抗的な態度は取らず
「どうしよう…」という戸惑いが全面に出てきたが故、彼女の性格すら変わって見えたような気がしたのです。
まあ、結果的には「飲む」わけですから、そこに至るまでのジュリエットの変化がどうのこうの…というのは、あまり重要ではないのかもしれませんが、

やけくそで「ええい、どうなってもいいわ、飲んでやる!!」よりかは
「どうしよう、怖いけど…でも、勇気を出して飲むわ!」

の方が、私にはわかりやすいし、共感できます。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

ところで、このシーン。
場面としては気になっていたのですが、歌というか旋律的には、予習の段階で気に入っていたのは、前半の結婚式の場面。この毒薬シーンの音楽には、さほどの思い入れがありませんでした。

それが…「あなたの魂は一日経つと、重い眠りから抜け出せます」のくだりの、少し旋律が明るく変わるところ…

ここのところで彼は、すくっと立って、とっても晴れやかに歌い上げていました。それが「魔笛」のザラストロとオーバーラップするなぁ・・と、一回目の時から思っていたんですけど、2回目の時に、彼の高音(ったって、もともと低い声ですから、そんなに高いわけじゃない^^;)決まった瞬間、ポロっと涙が出て

「~~~~~~~~~っ、ここで泣く予定はなかったわよ・・;」

「ヴァラリンさんの涙の話はしょっちゅうじゃん^^;」と思っていらっしゃる方が大多数だと思いますが、私にもなんというのか…
そう!一回目の時のような「スカラ座だぁ~~」という、変な感傷が後押しして、感情がぐわ~~っと高まってしまう時、
去年のフィガロの時のような時、
「バビ・ヤール」の時のように、有無を言わせず感情が、彼の歌と声にリンクして共鳴するような時と、涙の種類にも色々あるのです。

今回のは、そのどれにも当てはまらなかった。彼の声が、涙腺ではなく脳天をダイレクトに刺激して、ポロっと…という感じで、こんなことは初めてでしたから、自分でもびっくりしました。
6年半、ずーっと聴き続け、殆ど自分の皮膚感覚のように馴染んでいる、大好きな声だけど、また違う感じ方が生まれた…そのことだけでも、今回聴きに行けたことの価値は充分ありました。

゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

私はなぜか、彼のこういったお坊さん系の役(ザラストロ、ピーメン・・;)には異様な執着心があって(ヴェルレクとかの、宗教曲もこの範疇に入る…)

実際に聴くまでにはドキドキときめいたり、切なくなったり、感情をかなり振幅させながらも、いざ聴いてしまうと、なんとなく心の底から安心できる、収まるべき所に収まっているような、懐かしいような感覚を覚えるのです。

だから、たとえ老けメイクで老人に化けていても、ぜんぜん構わないのです。

(また、そーいう格好していても、やっぱり若さもにじみ出ているところが、禁欲的で逆にそそられます*vv 似合っているんですけどね)

バスのこういう旋律って、ロマンスを語っているわけでもなく、地味な旋律ですけど、
こういうのを歌う時の彼は、
太陽のように派手にアピールしなくても、ひっそりと輝く月のように
「僕、ここにちゃんといるから」
と、さりげなく存在感を出してくれます。

そんな彼の芸風、歌いっぷり、声をひっくるめて、私は彼がまるごと大好き。

そういう旋律を、本当に上手に歌ってくれるし、「しみじみ」と「切なさ」の両方を味わえるのは、バス歌手のファンならではの醍醐味だと思います。

そしてやっぱり、音響の良いスカラ座で、素晴らしい演出と共演者にも恵まれ、最高の舞台で彼を2回聴けたこと。大満足です。

欲を言えば、私はいつも遠征する時は最終公演×2回を狙って行くことが多いので…
帰って来た後に
「まだ3回も公演が残っているの、今この瞬間に歌っているのに、まだ聴けたのに、全部聴きたいわ…」
と、切なくなったことでしょうか(笑)
今回は出遅れちゃったから仕方ないけど、もう絶対、次回からは、後の公演を残す聴き方はしないようにします^^;

グノーは軟派で、かったるいわ!!と言っていた私が、約一か月近く経った今でも、ずーっと、ロマンティックな「ロメ・ジュリ」を聴いては、彼の声、仕草、歌い方を反芻して…を繰り返しているんですから「グノーイヤイヤ病」が完治する日も近い?!

来年5月末のモントリオールでの《ファウスト》メフィストフェレスが、楽しみです。
さー、いよいよしっかり、予習しなくちゃだ(* ̄ー ̄*)

 

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